コラム

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【解説】2026年改正建築物省エネ法〜「LCCO₂評価/上位住宅トップランナー制度/大臣認定制度」とは?

目次

まだ記憶に新しい建築業界の大きな転換点、2025年4月施行の「省エネ基準適合義務化」。実はその後、2026年7月31日にも建築物省エネ法の新たな改正法が公布されたことをご存じでしょうか?

今回の改正では、建物の運用時だけでなく建設から解体に至るまでの「ライフサイクル全体の脱炭素化(LCCO₂評価)」に焦点を当てた制度などが盛り込まれました。法律の目的に「脱炭素化の促進」が明確に位置づけられて以降、建築業界にはこれまで以上に高度な環境性能と取り組みが求められる時代へと突入しています。

これまでの制度は主に「運用時(居住・使用時)の省エネ性能」に着目していましたが、今回の改正では、建築物のライフサイクル全体を通じた炭素排出量(LCCO₂)の削減や、住宅供給事業者の取り組み強化、さらには高度な省エネ技術の活用が大きな柱となっています。

2027年4月からの「上位住宅トップランナー制度」の施行やGX志向型住宅(GX ZEH)の展開など業界の動きが加速する中、本コラムでは住宅事業者が押さえておくべき3つの重要ポイント——「LCCO₂(建築物通算炭素排出量)評価」「上位住宅トップランナー制度」「先導的省エネ技術の大臣認定制度」について分かりやすく解説します。

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建築物の生涯で脱炭素化を図る「LCCO₂(建築物通算炭素排出量)評価」

まずは、建築物のライフサイクル全体を通じた炭素排出量(LCCO₂)の削減についてみてみましょう。結論から言うと、現時点ではまだ住宅は義務規定の対象ではなく大規模な非住宅物件が該当してくる内容になります。ただこれらは、2050年を見据えた施策であり、近い将来、間違いなく住宅業界も対象となってくることを今からイメージしておく必要があるでしょう。

LCCO₂(建築物通算炭素排出量)とは?

改正法では、建築資材の調達・製造、施工、使用、解体・廃棄・再利用に至るまで、建築生産等の各段階において排出される炭素量を通算した量を「建築物通算炭素排出量」(いわゆるLCCO₂)と定義されています。また、これを算定し、環境への負荷について評価することを「建築物通算炭素排出量評価」と定められています。

各関係者に求められる役割と努力義務

建物のライフサイクル全体での脱炭素化を進めるため、関係者ごとに以下の努力義務が規定されています。建築士や業界全体の責任が大きいのがわかります。

  • 建築主等
    建築物通算炭素排出量の削減に努める。
  • 建築士・建設業者
    建築主に対し、削減に資する事項の説明に努める。
  • 建築材料等製造等事業者
    製造する建材等の炭素排出量原単位を表示するよう努める(主務大臣が定めた算定方法に従う場合、表示が可能)。
  • 建築主(設計段階での評価)
    建築物の建築(環境負荷が少ないものを除く)を行う際、指針に従って設計段階での評価(設計時建築物通算炭素排出量評価)を行うよう努める。建築士はこれに必要な説明や協力を行う。

大規模・特定用途建築物における「計画・評価結果の届出義務」

一定規模以上で特定の用途に供する建築物(延べ床面積5,000㎡以上の事務所等)を建築する場合、建築主(国等を除く)は「設計時建築物通算炭素排出量削減計画」を作成し、設計時評価を行わなければなりません。 さらに、工事着手日の14日前までに計画および評価結果を国土交通大臣へ届け出る義務が課されます。届出内容が判断基準に照らして著しく不十分な場合には、必要な措置の勧告が行われる対象となります。

第三者による認証制度の創設

国土交通大臣の登録を受けた第三者機関である登録建築物環境性能認証機関による認証制度が設けられ、評価結果に基づく認証を受けた建築物には「標章(認証マーク)」を付すことができるようになります。これにより、脱炭素性能に優れた建築物が市場で客観的に評価されやすくなります。 これらは、2027年中は準備期間で、2028年中の開始が予定されています。

大手住宅事業者の省エネ化を加速する「上位住宅トップランナー制度」

続いては、多くの住宅を供給している住宅事業者(市場の1/4を占める供給会社)の省エネ性能向上の強化を図ることで、新築業界全体の省エネ性能の引き上げを目的とした「上位住宅トップランナー制度」が定められましたので見ていきましょう。

対象となる「特別特定一戸建て住宅建築主等」の指定

その住宅の供給数が住宅市場において特に大きい大手ハウスメーカーや建売業者などが、国(国土交通大臣)から「特別特定一戸建て住宅建築主等」(いわゆる上位住宅トップランナー)として指定されることとなりました。

上位住宅トップランナーの具体的な整理は、以下のようになります。

・特別特定一戸建て住宅建築主(建売戸建て住宅)・・・・・・2,000戸
・特別特定共同住宅等建築主(分譲マンション)・・・・・・・2,000戸
・特別特定一戸建て住宅建設工事業者(注文戸建て住宅)・・・2,000戸
・特別特定共同住宅等建設工事業者(賃貸アパート)・・・・・15,000戸

目標設定と中長期計画の提出・報告義務

指定を受けた事業者は、省エネ性能の一層の向上に向けた目標の目安や判断基準に基づき、計画的に取り組む必要があり、その計画書の提出と報告義務が課されるようになりました。

  • 中長期計画の提出
    目標や取り組み事項を定めた中長期的な計画を作成し、国土交通大臣に提出しなければなりません。
  • 毎年度の状況報告
    前年度の取り組み状況や実績を毎年度国土交通大臣に報告する義務が課されます。

実効性を高める勧告・命令規定

そして、取り組み状況が判断基準に照らして著しく不十分と認められる場合は、国土交通大臣による勧告が行われることになります。

勧告に従わず改善が困難と認められる場合には、命令等の厳しい措置が執られることにもなってしまいました。

このように、新築住宅の総数が多い事業者にある程度の強制力と実効性を設けることで、2050年、直近の2030年を視野に新築住宅全体の省エネ性能の底上げに向けて、一気に舵を切られるようになったことを理解しておきましょう。

因みに、ここで言う上位住宅トップランナーがクリアすべき省エネ基準は「ZEH水準」レベルになります。来年から適用開始される「GX ZEH」は2030年を見据えた最高峰の省エネトップランナー基準と位置付けられており、断熱等性能等級5以上・一次エネルギー消費量等級6以上の「ZEH水準」とは異なりますので、違いは整理しておきましょう。

上位住宅トップランナー制度は、2027年4月から始動することになります。

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より高度な省エネ技術のための「先導的省エネ技術の大臣認定制度」

最後に、先導的な省エネ技術を評価する大臣認定制度も創設されましたので確認しておきましょう。これは、従来の計算プログラムでは適切に評価できない革新的な省エネ技術を用いた建築物に対しても、国土交通大臣が個別にZEH・ZEB水準と同等以上の性能を有するということを認定する制度です。

そして、認定を受けた建築物は「床面積の算定など容積率の特例措置」などが受けられるという事なので、注目すべき内容かと思います。

これらは、今回の改正建築物省エネ法に基づいて創設されたもので、こちらも2027年4月から施行されますので、業界の省エネ技術向上という意味では大変有意義な制度だと思いますので、よく確認しておきましょう。

では、例えばどういうものなのでしょうか?以下、参考例を記載してみますので、ご確認ください。

例1:「パッシブ技術」で自然エネルギーを最大限活かす

機械に頼らず、建物の構造自体でエネルギー消費を抑える技術。

全自動の自然換気・通風システム(アトリウム等)

建物内に「風の通り道(アトリウム等)」を設計し、室内外の温度差や圧力差、センサー連動の自動開閉窓を利用して、エアコン無しで建物を効率よく冷却・換気するシステムなど。

超高断熱建材(多層ガラス・高性能断熱材)の進化

トリプル(3層)ガラスの他、熱をほぼ通さない真空複層ガラスや特殊なガスを封入した建材、熱伝導率を極限まで抑えた最先端の断熱材を用いて、家全体の熱の出入りを完全に遮断する方法など。

例2:AIやIoTを活用した「アクティブ技術(設備制御)」

住宅設備をITで効率よく制御し、無駄なエネルギー使用を削減する技術。

HEMSとAIの連動

住む人の生活パターンや、翌日の天気予報・発電予測をAIが学習して、それに基づいて、エコキュート(給湯器)がタイミング良くお湯を沸かしたり、蓄電池の充放電を完全自動で最適化するような技術など。

熱交換型換気システム(各部屋の最適制御)

外の空気を室内の温度に近づけてから取り込む「熱交換換気」を進化させ、人のいる部屋や二酸化炭素濃度をセンサーで検知し、必要な部屋だけピンポイントで強弱をコントロールするシステムなど。

例3:次世代の「創エネ・畜エネ」と「ライフサイクルの脱炭素」

蓄電に関する新発想やLCCO₂に関する技術。

V2H(Vehicle to Home)と大容量太陽光のパッケージ化

電気自動車(EV)を大容量の「動く蓄電池」として、住宅と完全に統合。昼間に太陽光で発電した電力をEVに急速充電し、夜間はEVから家に給電する一元管理システムなど。

低炭素建材(木質化・リサイクル建材)の採用

建築時のCO²排出(イニシャルカーボン)を抑えるため、構造体に高度な国産木材加工技術を取り入れたり、製造時のエネルギー消費が少ない先進建材を積極的に導入するなど。

これらのような「先導的な省エネ技術」を創出していくことで、建築業界全体の技術向上が進み、新たな省エネのベクトルが定まっていくことは素晴らしいことかと思います。

そして、導入して大臣認定を受けることで、大手ハウスメーカーにとっては容積率の特例により、通常より床面積を広く設計できるなどメリットが得られることは、消費者にとっても大きなメリットとなることでしょう。

まとめ:2027年に向けた準備のポイント

今回の建築物省エネ法改正は、単に「運用時の省エネ」だけでなく、「資材調達から建築・解体・リサイクルに至る建物全体の脱炭素化(LCCO₂)」という新しい評価軸へのシフトを意味しています。

そして、2050年カーボンニュートラルにおける2030年目標に向けて、技術の向上とZEH水準の新築住宅の促進に重点が置かれました。

先に経済産業省から公表されたZEH定義見直しの「GX ZEH」への対応に追われる中、更なる準備課題も加わったことかと思います。

住宅・建築に関わる事業者にとっては、今後、以下の対応が今後の鍵となります。

  • 使用する資材・建材の炭素排出量(原単位)の確認や可視化
  • 設計段階におけるLCCO₂算定・評価プロセスの検討準備と整備
  • 大型供給事業者においては、中長期的な省エネ・脱炭素計画の構築と実施
  • 省エネに関する新技術の情報収集と取組み
  • 何より、「GX ZEH」レベルの省エネ計算の社内リソースの確保 など

2027年4月から新たにどのようなルールが施行されるの?
自社の手掛ける住宅や建築物がどの規定や義務の対象になるか?
現在の社内リソースで十分な対応が可能なのか?

早期に整理し、準備を進めておくことが大切かと思います。

在住ビジネスでは、様々な建築業務サポートを提供させていただいておりますが、その中には省エネ計算のサポートもご用意があります。また、2026年からは建築確認申請をはじめ、長期優良住宅や省エネ適判、BELS申請などの各種申請代行サービスも開始しております。業務負担の増大が予想される場合は、お気軽に在住ビジネスの「建サポ」までお問い合わせください。

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