コラム

能登半島地震から見る液状化対策を考えよう

昨年の能登半島地震から1年が過ぎました。来月には東日本大震災から14年を迎えることになります。
また、昨年は南海トラフ地震への警戒も大変高まった年でした。
大地震が私たちの生活に与える影響は、建物倒壊の危機の他、「地盤の液状化」も深刻な問題のなっております。
どんなに耐震性能が高い住宅を建築しても、その足元の地盤が崩れてしまうという事は大変恐ろしいことです。
本コラムでは、液状化被害が大変多かった能登半島地震を教訓に、地震による地盤の液状化を考えておきたいと思います。

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1,能登半島地震の被害状況

能登半島地震
発生日時:2024年1月1日 16:10
震  源:石川県能登地方
規  模:マグニチュード 7.6
震  度:最大震度 7
輪島市 : 震度7~6強 (最大加速度800gal)
志賀町 : 震度7~6弱 (最大加速度700gal)
七尾市 : 震度6強~6弱 (最大加速度700gal)
珠洲市 : 震度6強 (最大加速度1200gal)
穴水町 : 震度6強 (最大加速度600gal)
能登町 : 震度6強~6弱 (最大加速度600gal)
中能登町: 震度6弱 (最大加速度350gal)
内灘町 : 震度5強(想定) (最大加速度200gal)
金沢市 : 震度5強(最大加速度200gal)
※応答加速度(建物に生じる加速度)ではなく、地震動の加速度
(気象庁資料より引用)

ある国立研究開発法人の昨年5月時点での調査結果では、能登半島地震による液状化現象が確認されたのは、2,114ヶ所と報道されております。
これは、石川県、福井県、富山県、新潟県の4件34市町村にも及ぶ大変広域にわたる被害であったことになります。
参考までに過去の地震との比較でみますと、
阪神・淡路大震災:1,266ヶ所
熊本地震:1,890ヶ所
東日本大震災:8,680ヶ所
と言われておりますので、東日本大震災に次ぐ規模だったと言えます。
ただ、能登半島地震で注目されるのは、新潟県など離れた地域で震度5弱以下の観測だった地域でも、液状化現象が起きている点は気にかかります。
つまり、液状化は地震の規模によって起きり得るものではなく、地域ごとの土地の条件に大きく関連している言えるでしょう。
今回、日本海側の特徴的な地形により、液状化による「側方流動」という現象も起きているようです。では、そもそも液状化現象は何故起きてしまうのかを考えてみましょう。

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2,液状化現象について

液状化現象とは、基本的には地震が発生することで地盤が液体状になる現象のことです。
「液状化≒地震が原因」と考えても良いでしょう。
主に砂質系の土質の地盤に発生しやすく、同じ成分や同じ大きさの砂からなる土があるとします。その地盤は通常時は砂の粒子がくっつき合って地盤を構成しています。そしてその粒子同士の隙間(間隙:かんげき)に地下水などの水を満たしている状況であると想像してほしい。地震が発生することで、その結合が崩れてしまい、砂と水が分離してしまうことで地下水に浮いたような状態となり、地盤の液状化、地盤沈下が発生することになります。
特に木造住宅は建物重量が軽いが故に基礎が浅いため、液状化による地盤沈下の被害を受けやすいと言われております。
以上のことからわかるように、液状化してしまう条件には、主に以下の3つが考えられます。
① 地下水位が高い土地
② 砂質系の土質の地域(特に砂粒の大きさが均一・砂の締まりが緩い)
③ 震度5以上の地震(揺れが長時間継続) など

では、能登半島地震で液状化した地域を振り返ってみましょう。
基本的には、日本海側には砂丘が多いのが大きな特徴になります。砂丘は陸域(河川等)から海域に流れ込んだ砂が沿岸流で海岸部に運ばれ、季節⾵によって内陸に運ばれ堆積すると考えられており、地下水の上部に傾斜が伴う砂丘という形で形成されている場所が多いという事になります。
これは、先に述べたように液状化の条件を満たす状況と言えます。
そして平坦地の液状化と傾斜地の液状化でも被害に差が生じることになります。
傾斜地で液状化現象が発生すると、液状化層の上部の「非液状化層」が地表面変異を起こし、地盤が雪崩のように流動するという現象にも発展します。これを地盤の「側方流動」といい、「砂丘後背低地」で発生しております。
能登半島地震では、この被害が多く見られたといわれております。
大変恐ろしい現象ですが、冒頭で述べた通り、どんなに耐震性能が高い住宅を建てても、地盤がもろく崩れてしまっては、本末転倒かと思います。
ただ、間違えてはいけないのは、砂質系の地盤が全て危ないという事ではないので誤解のないようにお願いします。
地盤調査では基本的には砂質系の土質は大変固い地盤として判断されることが多いです。液状化現象はあらゆる条件が揃って発生する現象なので、大事なのは、建築地の地盤をよく理解して、どのような土地であっても、地盤改良などの充分な地盤対策をしていくという事だと思います。
例えば、液状化しない層までしっかり地盤改良杭を打設することで、液状化による不同沈下を免れたれも多く見受けられます。
最後に、液状化対策の地盤工法をいくつか紹介させていただきます。

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3,液状化対策の地盤改良工法

液状化に対する対策工法は大きく2つの考え方に分類されます。
1つは、「液状化を抑制する対策」で、わかりやすく言うと「液状化を生じさせない設計方法」という考え方です。そして、もう1つは、「液状化の発生を許容した対策」で、わかりやすく言うと「どうしても液状化が発生してしまう前提での設計」になります。

液状化を抑制する対策工法には、主に以下の3つが上げられます。
① 変形抑制工法
② 地下水位低下工法
③ 排水促進工法
「変形抑制工法」は建物下部の地盤が、外の地盤と隔離するように改良体で囲い込み遮断することで、建物下部を「非液状化地盤」とする施工方法になります。
専門的な話になりますが、柱状改良体などを上部から先端までラップ施工することが難易度が高く、施工時に周辺敷地に土圧を掛ける可能性が高いため、狭小地などには適さないなど、多くの制限は考えられるでしょう。
また、「地下水位低下工法」は、簡単に言うと液状化の原因の「地下水を抜いてしまう」という考え方の方法である。ただ、これは考え方はわかりやすいですが、遮水壁を設置して地下水の流入を遮断してから水抜きを行う必要があり、その遮水壁の施工に費用面での負担が大きいため、住宅では現実的ではないかもしれません。
「排水促進工法」は、先程お話しした砂の粒子の過剰間隙水圧の消散速度を速める考え方になりますが、要約すると地震発生時に水の逃げ道を作り早めに水を抜き、液状化を発生させないようにする方法になります。
但し、液状化は防げても当然抜いた水の分だけ地盤の圧密沈下は促進させることになるので十分な検討は必要かと思います。
このように、液状化を抑制する工法は、理屈ではわかってもなかなか現実的ではないデメリット部分も目立つ印象があるかもしれません。
対して、「液状化の発生を許容した対策」は、木造建築など住宅単位ではわかりやすく現実的な対策かもしれません。

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簡単に言うと、「液状化層の下部の非液状化層まで既製杭を打設」することで、液状化が起きたとしても建物自体は既製杭に支えられ沈下しない、という方法になります。能登半島地震でも「杭状地盤補強工法」による住宅の液状化被害において、在住ビジネスの地盤協力会社からは、不同沈下等の被害が少ない旨の報告を受けております。「杭状地盤補強工法」は、液状化しない支持地盤まで既製杭を打ち込むことで建物を支えるため、不同沈下こそしないものの地面は沈み、杭の抜け上がり現象は発生します。その為、上下水管などのライフラインのフレキシブル化などの検討は必要と言われてます。
とはいえ、杭状地盤補強工法は通常の地盤改良工事の一種のため、費用面でも現実的で、地震発生後も建物が沈下さえしていなければ、修復費用も比較的抑えられるといえるでしょう。
杭状工法には、鋼材、木材、セメント系などいくつかありますが、今回は「H型PCパイル工法」をご紹介しておきます。総じて「コンクリートパイル工法」と言われますが、その名の通り、工事現場でコンクリートを固めるのではなく、予め工場で製造した、とても強いコンクリート材を使用するものになります。
「PC」は「プレキャスト・コンクリート」の略で、製造過程で強いストレスを与えることで通常の鉄筋コンクリートより強度を強くしたものです。
想像しやすく言うと、切断面がアルファベットの「H」の形状の電柱のようなものを地盤に打設していくと考えていただければと思います。
北海道や東北・日本海側など雪が降る地域では、現場でセメントを固め工法は凍結などの影響で支障があるため、このような既成杭を使うのが一般的と言えます。
能登半島地震の液状化被害エリアでは、軒並み不同沈下している住宅のなかで、「PCパイル工法」による施工がなされた住宅は、沈下しておらず問題が無かったことがいくつか確認されております。
住宅を建てる際は、建物自体の設計プランにばかり、目が行ってしまいがちですが、地盤調査や補強工事の重要性も本コラムでご理解いただけると嬉しく思います。

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4,最後に

当然、建築前段階での地震対策は大変重要だと思います。耐震性能や地盤対策などやれることはいくつかあるでしょう。ただ、「自然の力」が相手のことになりますので、どれだけ対策を講じても万全という事は無いでしょう。
ただ、今後、未曽有の巨大地震の南海トラフ地震が発生するかもしれないと考えると、事前の備えと、起きてしまった後の準備が必要でしょう。
安心できる地震対策として、耐震性能の確認や地盤対策、更に沈下修正工事、その後の保険対応など、在住ビジネスは「建サポ」の総称で住宅会社の建築サポートを携わってます。
建築のプロの方々でも苦手分野はあるかと思います。
お困りの際は、在住ビジネスにお気軽にご相談ください。

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