コラム

4号特例縮小による新壁量基準をwallstatで検証してみよう

いよいよ2025年4月から、建築基準法改正により壁量基準が変わります。いわゆる4号特例縮小ですが、基本的には壁量が増加するという見方が大勢でしょう。一方で、昨年は能登半島地震に始まり、南海トラフ地震への警戒も高まり、近い将来に訪れる未曽有の巨大地震に備える意識も高まってきたことかと思います。
40年ぶりの法改正により、耐震性能はどのくらい高まるのか?
本コラムでは新しい壁量係数の計算方法に触れながら、wallstat(ウォールスタット)で新旧壁量基準による建物検証をご紹介していきたいと思います。

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https://zaijubiz.jp/service/structural/
▽wallstat(ウォールスタット)検証のご相談は「建サポ」まで
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1.新壁量基準設計ツール①:早見表

新壁量係数の計算方法については、公益財団法人日本住宅・木材技術センターが、国土交通省からの要請を受け、在来軸組工法用の設計支援ツールを整備し、公開しております。その中では、①早見表 ②表計算ツール の2つがあり、どちらを選択しても良いことになっています。
では、まずは新壁量係数の算出方法の一つである「早見表」を見ていきましょう。
早見表においては、在来軸組工法における一般的な住宅を想定したもので、階高や1階2階の面積比、太陽光発電設備の有無により選択して使用するものになるため、こちらに当てはまらない住宅においては表計算ツールを使用することになります。

以下の早見表画像をご覧ください。

太陽光発電設備の有無で2つの表に分かれており、縦軸は1階2階の階高で3列、横軸は1階2階の面積比の7列で構成されております。この全42種のうち、どこに当てはまるかを選択すると、以下の一覧が表示され、ここで屋根3種、外壁材5種から選択して「単位面積当たりの必要壁量Lw」と「柱の小径」を算出するものになります。
 

 

算出方法としてとても簡略化されているので、使用しやすいと思います。ですが、階高は3.2mまで、オーバーハングも120/100までの想定のみ。また、簡単なものほど過剰スペックになりがちです。実情に見合った計算を望まれる場合は表計算ツールの使用をお勧めします。
簡素化した分、壁量も多めとなる傾向にあり、建物荷重も重くなることで柱の小径も「105」を微妙に超える結果になることも多くなるでしょう。3.5角から4寸角想定となる傾向にあるかと思いますので、試してみていただければと思います。
良く言えば、安全側の計算となりますが、簡略化されているだけ過剰スペックになる可能性はありますので、表計算ツールと比較算定されてみてはいかがでしょうか。

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2.新壁量基準設計ツール②:表計算ツール

早見表が決められたパターンから選択していく方法に対して、表計算ツールは所定のエクセルに実際の数値を入力して算出する方法になります。
まずは、必要壁量の算出においては、以下の画像の「入力欄」のような項目を入力していきます。具体的な各階の高さや太陽光発電設備の質量や断熱材の密度、厚さなど必要項目を入力することで自動計算されます。

 
画像のオレンジの箇所に「単位面積当たりの必要壁量Lw」が表示されます。
こちらは、「表計算ツール(在来軸組工法用)」のエクセルフォーマットになりますが、公益財団法人日本住宅・木材技術センターのサイト内では、「表計算ツール(多機能版)」のフォーマットもあり、多機能版では以下の3点の設定、算出が可能になっています。
① 「在来軸組工法用」の機能を拡張し、屋根勾配と軒の出、及び屋根断熱材の設定
② 住宅性能表示制度に対応して床面積に乗ずる値の「等級2」、「等級3」の算出
③ 建物の用途を「事務所」に変更することで事務所の積載荷重に対応した床面積に乗ずる値及び柱の小径等を算出
必要壁量の算出においては、表計算ツールも入力手間は多少かかるものの簡略化されているので、やり慣れていない社員の方でも順応しやすいかと思います。

一方で「柱の小径」の算出においては、以下画像のように3種があるため、よく確認しておく必要があります。

・「2-1」:算定式と有効細長比より柱の小径を求める場合
・「2-2」:樹種を選択して、算定式と有効細長比より柱の小径を求める場合
・「2-3」:柱の小径別に柱の負担可能面積を求める場合

「2-1」は各階の垂直距離より柱の細長比をもって柱の小径を算出する方法で、主に「すぎ材」「無等級材」を前提としたものです。
また「2-2」に関しては、それに「樹種」を入力することで、より実態に近い算出を行います。例えば、「2-1」で無等級材「105角」以上の柱の小径値が出てしまった場合でも、「2-2」で集成材などを選択して算出すると「105角」で収まるという事もあります。
より実態に近い算出ができることになります。
さらに「2-3」は、柱ごとの床の負担可能面積を算出することで、さらに実態に近い柱の小径を算出することができる方法になります。
このように、いくつかの方法が選択可能になっておりますが、物件ごとに、住宅会社ごとに全体像を理解した上で、選択していく必要があると思います。
なお、早見表、表計算ツールはあくまでも一般的な住宅を想定した計算方法になります。これらに当てはまらない場合は、「設計者判断等により想定する固定荷重や建築物高さ等のパラメータを実態に応じて、個別に計算する場合には、必ずしも当該表計算ツールの算定方法や算出根拠に準じなくても良い」となっており、状況に応じて設計者判断に基づき根拠を示した上で適宜調整が可能とも「解説・注意事項」欄には記載されていることも補足しておきます。

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3.wallstat検証:新壁量基準(R7.4)×旧壁量基準 比較

ここまで令和7年4月以降の新壁量基準の算出方法についてお話しさせていただきました。
因みに壁量基準に関しては、令和8年3月までの猶予期間が設けられております。
その為、社内体制が追い付かない場合は、まだ1年間が現行基準での壁量でも大丈夫という事になります。但し、これはあくまでも建てる側の都合であって、お施主様にとっては、建てた瞬間に「既存不適格」となるので注意が必要です。
つまり、お施主様には十分な説明をした上で進めなければ大きなトラブルに発展しますので気を付けていただければと思います。
但し、ここで言う「十分な説明」が大変難しいと思います。計算上の数値を見せても消費者の方にはわからないでしょう。
wallstat(ウォールスタット)は、その計算上の違いを見える化できるので、大変有効なツールとして活用できるかと思います。

今回、同一プランで新旧壁量基準でのwallstat比較検証を実施しましたのでご覧ください。
検証内容は以下に記載します。

<検証内容>
対象建物 :木造2階建て(太陽光無し)
耐震性能 :耐震等級3相当
壁量計算 :現行基準(左)・新基準(右:早見表にて算定)
地震波  :熊本地震本震・益城町観測 震度7
地震波倍率:1.25倍(未曽有の巨大地震想定)

<検証動画>

南海トラフ地震に備えるという事は、今までに経験したことのない地震に備えるという事です。この動画では、熊本地震の1.25倍の地震波で検証しました。
新旧壁量基準では耐震等級3でも「倒壊」か「非倒壊」かで命運を分ける結果となりました。もちろん、設計プランによっても結果を大きく変わります。さらに、重い屋根(太陽光発電設備あり)での検証、又は3階建てですと、もっと大きな違いが出ると予想できます。
本コラムでは基本的な住宅の比較検証に留めておきますが、お施主様や設計者にとっては大変気になる検証かと思います。
今時の建物は耐震性能が高いというのは一般の方もわかっていることかと思います。
ただ、これからの時代は、それがどのくらい強いのか、巨大地震を経験した後も住み続けられるのかを伝えていくことが、住宅を携わる者にとって重要な使命かと思います。

最後になりますが、在住ビジネスは様々な建築業務サポートを「建サポ」の名称で提供しております。許容応力度計算、軸組計算(壁量計算)、wallstat入力・検証など代行業務を承っております。
業務量が増大していく中で、皆様の良きパートナーとして覚えていただければ幸いです。

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(公益財団法人日本住宅・木材技術センター)
▽璧量等の基準(令和7年施行)設計支援ツール
https://www.howtec.or.jp/publics/index/441/

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