コラム

日本銀行 政策金利引き上げのメリット・デメリット

2025年の年初のコラムは地震対策をテーマにwallstat(ウォールスタット)のお話を中心にお話しさせていただきましたが、先日、日銀の植田総裁から政策金利引き上げに関する大きなニュースが話題となりましたので、本コラムでもふれさせていただきます。

政策金利は中央銀行が誘導目標として設定する金利のため、金融機関の預金金利・貸出金利、住宅ローンなど、様々な分野に影響を与えるデフレ・インフレ対策の重要な施策の一つになります。では、日銀の政策金利は私たちの生活や建築業界にはどのような影響があるのか?
基本的な理解をしていきましょう。

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1.政策金利追加利上げの決定

2025年1月24日時点で日本銀行(日銀)は、金融政策決定会合で政策金利を0.5%程度にする追加利上げを決定しました。
日本では2016年2月に導入したマイナス金利政策が続いておりましたが、2024年以降、追加利上げが続き、2008年以来17年ぶりの高水準に引きあがられたという事になります。
一般的に景気が悪い時には、政策金利は下げられます。
その場合、金融機関は日銀から低い金利で資金調達ができるため、企業や個人(住宅ローンなど)に対しても、低い金利で貸し出しやすくなるため、設備投資や個人消費も促進させる効果が見込まれます。
消費を活発にするという事は、経済活動が活発になるという事なので、景気回復の施策として講じられることになります。これは物価が上昇していくという事にもつながります。
一方、景気が良い時は金利を上げて、設備投資や個人消費を抑制するすることで景気の調整を図ることになります。
今までの低金利施策はデフレから脱却することを目的としていたと言えます。
今回の追加利上げは、資材高騰・賃金上昇などによる価格転嫁が物価上昇に反映されてきており、経済・物価が概ね目指していた水準に推移してきた判断され、踏み切ったと言えます。
今後においては、「利上げをしたことの効果を確かめつつ段階的に利上げすることが適切かと思う」と述べており、更なる利上げも景気動向を注視した上でその可能性を否定はしない発言となっております。
アメリカのトランプ政権が今後どのような影響を日本に及ぼすかも、慎重な判断が求められる要素の一つとなっております。
そんな中で、私たち消費者個人においても、建築業界における企業としてもどのような影響が出てくるでしょうか?

▽参照サイトはこちら
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250124/k10014702081000.html

2.利上げのメリット・デメリット 住宅ローン金利への影響は?

政策金利が上がるという事は、資産を運用する上ではメリットがあると言えます。
身近なもので言えば、銀行の預金金利は増えることになります。また有価証券の運用利回りも良くなり、今回の利上げでも上向く可能性はあるでしょう。
お金を預ける、運用するという面ではメリットはわかりやすいと言えますが、「借りる」場合のデメリットの方が、それらを上回る印象を与えるかと思います。
当然借りる場合は、借入金利も上がります。
企業で言えば、銀行からお金を借りづらくなる。
そうなると先行投資がしづらくなり、設備投資や人材確保などに踏み切れなくもなっていくことが予想されます。中小企業ほど今ある設備と人材で運営していく業務改善が求められることになると予想されます。
また個人で言えば、最も注目されるのは「住宅ローン金利」への影響と考えられます。
今回の利上げで各金融機関は、2025年4月には一斉に住宅ローンの変動金利を引き上げる可能性を高めております。
では、住宅ローン金利はどのくらい上がってしまうのか?
普通に考えて、今回の追加利上げは0.25%の引き上げなので、同様に0.25%の引き上げが可能性が高いと思われますが、昨年3月のマイナス金利解除から、7月の追加利上げ、そして今回の追加利上げという段階になっておりますが、前回、前々回の利上げ時に適用金利を据え置いている金融機関も都市銀行でも見受けられますので、最低でも0.25%の引き上げと考えておいた方が良いかもしれません。
住宅ローンにおいては、変動金利タイプ、固定金利タイプが基本ですが、金融機関によっても適用金利は様々なので、断定的かつ細かい説明は、各金融機関のサイトにてご確認いただくしかありませんので、ここでは月々の支払額にどのくらい影響するのかを参考として述べさせていただきます。
特定の金融機関の金利を事例で使うわけにはいきませんので、わかりやすい金利設定で説明させていただきます。

●金利による月額支払額・支払総額の比較
条件:借入額4,000万円 借入年数35年
<金利:0.5%の場合>
月々返済額:103,800円、支払総額(35年間):43,596,000円
<金利:0.8%の場合>
月々返済額:109,200円、支払総額(35年間):45,864,000円
<金利:1.0%の場合>
月々返済額:112,880円、支払総額(35年間):47,409,600円

上記参考例では、0.5%・0.8%・1%の場合の返済額の違いを記載させていただきました。
月々の支払額は約5,000円~10,000円の差額となりますが、支払総額でみると約220~380万円の差となってきます。
各金融機関の住宅ローン商品により、適用金利は違いますが、借入額に対する金利計算は同じですので、参考目安にはなると思います。
ここでは早く購入したほうが良いかを言及するつもりはありませんが、政策金利の利上げは借りる側にはデメリットとなることはいえると思います。
言えることは、これら金利上昇に見合った賃金上昇が中小企業においても実感できるような世の中になることが重要という事です。
今後の景気動向を注視していく必要があるといえるでしょう。

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3.政策金利「0.5%」の壁を越え、「1.0%」の可能性も

今回の追加利上げによる政策金利0.5%は、過去30年近く超えたことのない「0.5%の壁」と言われる金利になります。これはバブル崩壊直後まで遡ります。
先に述べた通り、2016年からマイナス金利政策が長いこと続いた中で、およそ1年足らずで0.5%までの引き上げになりますので、市場に与える影響は大きいと思います。
日銀内では、1%までは利上げを進めたいとの意見もあるという話も目につきます。
これは、日銀内で景気を安定的にするために「中立金利」に近づけていきたいという考えがベースにあります。日本で言う中立金利は1%~2.5%と幅広いレンジで考えられておりますので、今後は社会情勢・世界情勢を慎重に注視しながら政策運営をしていくという事に他ならないでしょう。
過去にもリーマンショックなど、予期せぬ要素により政策が後退してしまったこともありますが、現在においての不確定要素は世界情勢、とくにトランプ政権は未知数の要素があります。
いずれにしても、これからは不景気脱却、景気安定化に向け金利の平常化(金利引き上げ)の流れは既定路線と言えるでしょう。

4.最後に

ここまで述べさせていただいたように、私たち消費者や企業は金利引き上げの流れに順応していく必要があります。
最もよいのは大企業も中小企業も賃金が上がったと実感できる世の中になれば本当の意味での「景気が良くなった」という事になるでしょう。
その為には、やはり企業が疲弊してしまっては実現が難しいものです。
融資が受けづらくなるという事は、現状の業務改善が必須でしょう。
建築業界においては、大きな法改正もある年になり、業務量も増加します。
一方で、働き方改革により、時間外労働など過剰な負荷を従業員に掛けることもできなくなります。
加えて運転資金の調達も困難になる上で、DX化などでの業務効率化と外部リソースの活用など準備を進めてみてはいかがでしょうか?
人的リソースのスリム化と外部リソースの活用は、今後重要なテーマになってくると思います。これを機会に考えてみてはいかがでしょうか?

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