コラム

省エネ性能表示制度の実務的な流れをおさらい

 2024年4月から省エネ性能ラベルの表示が努力義務と定められました。本制度は2050年のカーボンニュートラル実現の一環として始まり、木造住宅の建築にかかわる工務店、ハウスメーカーの皆様にも深くかかわることとなる制度です。そこで本記事では省エネ性能表示制度を実務的な流れについて解説します。

1,省エネ性能表示制度全体の流れ

 まず、省エネ性能表示を行うにあたって5つの工程があります。

①建築物の省エネ性能を評価する(仕様基準・性能基準)
②省エネ性能ラベル・評価書の発行(自己評価・第三者評価)
③販売業者・賃貸業者が仲介業者へ伝達
④販売・募集時に省エネ性能ラベルの広告掲載
⑤お施主様へ告知・説明

 以上の工程があります。工務店やハウスメーカーが大きくかかわるのは①建築物の省エネ性能を評価する、②省エネ性能ラベル・評価書の発行の2つです。いずれの工程で何をしているのか、次の項目でより詳しく解説いたします。

2,それぞれの詳細

 まず工務店やハウスメーカーが大きくかかわる①と②について解説します。

①建築物の省エネ性能を評価

まずは建築物の省エネ性能を評価していきます。評価方法は大きく2つあります。

・性能基準(いわゆる省エネ計算)

…「外皮性能」と「一次エネルギー消費性能」の計算を行い、基準適合を確認する方法

住宅版 WEB プログラム |: https://house.app.lowenergy.jp/#/

・仕様基準

…計算をせず、仕様基準・誘導基準ガイドブックのチェックリストを用いて簡単に確認する方法

資料ライブラリー-仕様基準ガイドブック| 国土交通省: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/04.html

 以上を用いて建築物の省エネ性能を評価していきます。外皮性能と一次エネルギー消費性能が導き出せるなら住宅版 WEB プログラムを使用し、仕様が分かる場合は仕様基準で確認すると良いでしょう。

②省エネ性能ラベル・評価書の発行

 次に、省エネ性能評価を基にラベル・評価書を取得していきます。評価方法は大きく2種類あります。

・自己評価

…住宅性能評価・表示協会のHPにアクセスし、いずれの評価結果をアップロード、入力をした後にラベル評価書の発行・保存をします。

・第三者評価

…①で出した評価を第三者(評価機関)に申請し、審査の上、評価機関からラベル・評価書が発行されます。

 いずれの方法で発行された省エネ性能ラベル・評価書は下記画像のとおりです。

 自己評価と第三者評価のラベルの違いは簡単に言いますと、自己評価は少しの手間で費用無しで発行が可能となりますが、評価書の信頼性となると第三者評価とは大きく差があると言えます。詳細については、過去のコラムで解説しておりますので、こちらをご参照頂けますと幸いです。

▽建築物の省エネ性能表示制度をおさらい▽
https://zaijubiz.jp/column/2024-04-12/

では、ここからはお施主様の手に渡るまでの工程を解説します。

③販売業者・賃貸事業者が仲介事業者などへ伝達

 ここでは委託している仲介事業者等へ物件情報を連携するタイミングで省エネ性能ラベル、エネルギー消費性能の評価書を伝達していきます。伝達するまでのパターンは大きく2パターンあります。

引用元:https://www.mlit.go.jp/shoene-label/images/guideline_gaiyou.pdf

 販売・賃貸事業者が直接BtoBサイトなどにラベル掲載し、客付け仲介事業者に届ける、または販売・賃貸事業者が元付けの仲介事業者に依頼してBtoBサイトなどにラベル掲載し、客付け仲介事業者に届ける場合があります。

 この場合、主にレインズなどの主要サイトが活用される場合が多いと想定されます。

④広告宣伝

 客付け仲介事業者が実際お施主様に届けるために掲載媒体に広告を掲載します。媒体は主にインターネット広告や新聞/雑誌広告、新聞折り込みチラシ、パンフレットなどがあります。紙面で掲載する場合は横幅60mm程度を目安としており、視認性を保つよう基準が設けられています。

⑤お施主様へ説明

 そしてお施主様との商談や契約、引き渡しの際に省エネ性能ラベル、エネルギー消費性能の評価書を用いて説明していきます。再販の時も省エネ性能ラベル、エネルギー消費性能の評価書を保管するように説明していきます。

3,実務的観点から効率よく進めるには

 以上のように省エネ性能表示を実務的な流れで見てみると、多くの業者が関係し、多くの手順があることがお分かりいただけたと思います。特に工務店やハウスメーカーが担う①と②の負担が大きいこと、そしてこの2つを効率よく進めることによって、よりお施主様に届けることへ繋げられるでしょう。

 そして建築業は建築基準法や労働基準法など、法改正の対応に追われ続けています。いずれを考慮すると、国土交通省ガイドラインを熟読して理解を深めながら社内、もしくはアウトソージング等を検討しながら効率よく進めていけるように検討してみるのも良いでしょう。

 省エネ性能表示制度は、今でこそ一部の事業者への努力義務ではありますが、2050年カーボンニュートラルを視野に入れると、現時点から全ての建築物において標準的な採用の流れを導いているとも考えられると思います。

4,終わりに

 今回は省エネ性能表示を実務的観点から解説いたしました。今後省エネ性能表示は2050年のカーボンニュートラル実現とともにお施主様からの関心がより深まることが予想されています。省エネ性能表示の自己評価、そして第三者評価ラベルや評価書があればより多くのお施主様から信頼を得られるでしょう。

 そのためには建築業分野での理解、効率化がもとめられます。いずれも自社で進めるか、よりスピーディーに進めるためにもアウトソージングをするなど検討すると良いでしょう。

▽省エネ性能表示制度に関するセミナーはこちら▽
https://zaijubiz.jp/news/20240723/

▽省エネ計算 / BELS申請のお問い合わせに関してはこちらから▽
https://zaijubiz.jp/service/bels/

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