コラム

地盤調査報告書とは? 見方を確認しよう

 新たな住まいを建てるとき、予定している土地に問題がないか確認する調査として地盤調査があります。地盤調査を終えた後、地盤調査報告書が作成されますが、内容がなかなか理解できない方も多いのではないでしょうか。今回は地盤調査報告書の見方を解説します。

1,木造一般住宅における地盤調査報告書の役割

 まず、地盤調査とは住宅の基礎を造る前に行われる調査で、地盤の強弱について確認するものです。木造住宅の地盤調査は、大きな被害があった阪神・淡路大震災後の2000年に建築基準法が改正されて以来、義務化されました。主に建築基準法施行令38条・93条に加え、国土交通省告示1113号にて示されております。したがって地盤調査報告書はこの地盤調査の結果をまとめた報告書になります。

1,調査報告書を見る前の確認点

 一般的に「地盤が良い、悪い」というのは、その土地にどのような建物を建てるかによって判断は変わります。「軽い建物」なら「地盤が良い」と判断されても、同じ土地に「重い建物」を建てるなら「地盤が悪い」と判断されることもあります。

 つまり、建築予定の建物に対して、地盤が良いのか悪いのかを判断するのであって、建築物が未定の段階で判断するものではないという事を前置きさせていただきます。

 その上で、地盤調査報告書を見る前に確認しておきたい点が大きく3点あります。

 ・地盤を判定するときの考慮点

 まずは地盤を判定するときの考慮点です。この項目は主に計画地に行った地盤調査の方法や地形・地層がどうなっているのか、地形の傾斜や位置、造成状態などがまとめられています。例えば、一見強そうな地盤でも造成して間もないようであれば、圧密沈下を起こす可能性もあり、いずれも判定するときに必要な情報が記されているので、あらかじめ見ておくと良いでしょう。

 ・計画地の地形図

次に確認して頂きたい点は計画地の地形図です。地盤を判定するときの考慮点で記されていた地形・地層が地形図として記されています。地形図で見ることでこれから建築する場所周辺がどのような地形なのか、該当の地形がどのような分類になっているのかを確認しておくとよいでしょう。また、昔は田んぼだった、旧河川だったなど、地歴によってもその土地の地盤がどのような土質なのかなども推測することができます。よりどんな場所で地盤調査が行われたのか、可視化できます。

 ・試験方法・試験結果の見方

 最後は地盤調査の試験方法と試験結果の見方です。木造住宅の地盤調査はスクリューウエイト貫入試験(以下SWS試験)で行われますが、多くの場合、地盤調査報告書では、SWS試験がどのような試験方法なのか、又は、SWS試験の結果の見方がわかりやすくまとめられています。結果をより知りたいときはこちらをチェックすると良いでしょう。

2,地盤調査報告書の項目

次に地盤調査報告書の項目についてです。主な項目は下記のとおりです。

項目名示しているデータ分かる点
貫入深さ地表面からの深さ調査機のハンドルの回転数と合わせて地盤の強度を確認します。
荷重Wsw地面にかける荷重(重さ)荷重をかけたときのロッドの貫入量を測定します。5・15・25・50・75・100kgで行われる
半回転数Naハンドルの回転数(半回転180度で1回)地盤の固さ
25㎝貫入させるのにロッドは何回半回転するのか調べる
1mあたりの半回数Nsw半回転数を1mあたりに換算した数値貫入量・地盤の固さ
荷重のグラフ荷重Wswをグラフ化どれほどの荷重で
ロッドが沈んだのか 地盤の強弱を見える化
1mあたりの半回転数のグラフ半回転数(Na)を1m当たりに換算したグラフ地盤の強度
換算N値標準貫入試験値地盤の硬さを表す指標

以上のように、それぞれの項目にはこのようなデータがまとめられており、それぞれのデータが見えるようになっています。

 通常、一般住宅では5測点調査が基本となりますが、各測点の上記調査データを取り、地盤の判定を実施することとなります。

3,施主様に見て頂きたいポイント

 地盤調査報告書のデータ項目の意味が見えたところで、少し専門的な内容になりますが、重要なポイントについて2つほど解説します。

1,地下水位の有無・高さ

 まずは地下水があるか、そしてあるとするなら水位がどのくらいの深さにあるのかについてです。地盤調査をした計画地の地盤の中にはどの程度の地下水がどのくらいの深さにあるのか確認することで、液状化現象が起きやすいかどうかを判断する上でも重要です。また、地盤補強を行う際も選択できる工法を定める基準にもなります。

2,盛土があるか

 次は盛土があるかについてです。盛土は傾斜のある土地を平らにするために土砂が盛られた土です。新しいほど収縮しやすく、盛られている量が厚ければ厚いほど収縮量が増え、沈下しやすくなります。盛土がもしあった場合はいつ盛土をしたのかを確認する必要があります。また、その状況を考慮した適切な地盤補強を行っているかが重要になります。

4,終わりに

 地盤調査報告書は新たな住まいを建てる前には欠かせない地盤調査の結果をまとめたものです。どのような項目があるのかを知ったうえで見ると、よりこれからの未来に役に立つものです。

 もし報告書内で見えない点がございましたら、本記事を参考にして頂けると幸いです。

 そして、本コラムでは、お施主様目線で記載させていただきましたので、最後に肝心なお話をさせていただきます。

 地盤調査や判定、又は地盤の補強工事は、主に地盤会社が実施しますが、あくまでも地盤会社の責任は施工責任であり、お施主様がお住まいになる住宅に及ぼす法的責任は、その住宅設計者に帰属していることを述べさせていただきます。つまり、本コラム記載のような調査結果を見て、どのような地盤対策を講じるかは、住宅の設計者の責任で判断することとなっており、安全性を担保する「設計者責任」は、建物だけではなく地盤対策においても帰属しているという事を充分理解しておいていただければと思います。

 在住ビジネスのホームページでは、地盤における「設計者責任」についても、判例と合わせて記載させていただいております。

 詳しくは、下記URLサイトの下部に記載しておりますので、ご参照ください。

▽設計者責任についてはこちら▽

https://zaijubiz.jp/service/

▽地盤調査についてはこちら▽

https://zaijubiz.jp/service/j-optimize/

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