アスベスト調査・作業は、健康被害を防ぐために専門的な知識と技術が不可欠です。法改正により事前調査が義務化され、有資格者による調査・報告が求められるようになりました。
アスベスト除去に資格が必要な理由は、安全な作業と適切な処理を徹底するためです。
「大気汚染防止法」と「石綿障害予防規則」が改正され、アスベストに関する規制が強化されました。
建築物の解体・改修工事における事前調査が義務付けられ、場合によっては事前調査結果を所轄労働基準監督署へ報告することも義務付けられました。また、事前調査は、専門的な知識を持つ有資格者が行う必要があります。
この記事では、アスベスト調査・除去に関連する資格について解説します。この記事の内容を参考に、アスベスト対策への理解を深めていただければ幸いです。
アスベストによる健康被害防止のための法改正
アスベストによる健康被害を防ぐため、法改正が行われました。工事前の事前調査や結果報告が義務化され、さらに、この事前調査を行うには有資格者であることが求められるようになりました。これらの改正は、アスベストによる健康リスクを減らすための重要な措置です。
アスベスト除去に資格が必要な理由
アスベスト除去に資格が必要な理由は、作業者の安全確保と、アスベストの飛散による周辺環境への影響を最小限に抑えるためです。
アスベストは、吸い込むと健康被害を引き起こす可能性のある有害物質です。適切な知識や技術がない作業者が除去作業を行うと、アスベストが飛散し、作業者自身や周囲の人々の健康を脅かす恐れがあります。
<資格が必要な理由>
- 作業者の安全確保
- 飛散防止対策の徹底
- 周辺環境への配慮
これらの理由から、アスベスト除去作業には専門的な知識と技術を持った有資格者による作業が不可欠です。資格取得者は、アスベストの危険性や適切な除去方法、保護具の使用方法などを習得しており、安全かつ確実な作業を行うことができます。それにより、アスベストによる健康被害を未然に防ぎ、安全な環境を維持することが可能となるのです。
「大気汚染防止法」及び「石綿障害予防規則」の一部改正
令和2年(2020年)7月に「石綿障害予防規則」が改正、令和3(2021)年4月から「大気汚染防止法」が改正されました。
改正の背景には、アスベストによる健康被害を防止するため、より厳格な規制を設ける必要性が高まったことがあります。具体的には、アスベスト含有建材の除去等作業における作業基準の強化、周辺環境への配慮、そして作業者の安全確保が主な目的です。
改正により、アスベスト除去作業に関する規制が強化され、作業計画の作成・届出、作業方法の遵守、そして作業後の適切な処理が義務付けられました。これにより、アスベストの飛散を抑制し、周辺住民や作業者の健康リスクを低減することが期待されています。
このように、法改正はアスベストによる健康被害を未然に防ぐための重要な措置であり、関係者は改正内容を理解し、適切な対応を行う必要があります。
事前調査の義務化
アスベストによる健康被害を防ぐため、法改正により事前調査が義務化されました。
建築物の解体や改修工事を行う前に、アスベストの有無を調査することが法律で義務付けられています。この義務化は、作業者だけでなく、周辺住民への健康被害を未然に防ぐことを目的としています。
<事前調査の義務化対象>
- 建築物の解体
- 建築物の改修
- 工作物の解体
- 工作物の改修
これらの工事を行う際は、事前にアスベストの有無を調査し、その結果を記録・保存することが義務付けられています。調査結果は、工事の計画や作業方法を決定する上で重要な情報となります。もしアスベストが検出された場合は、適切な除去作業を行う必要があります。事前調査を怠ると、法律違反となるだけでなく、健康被害を引き起こす可能性もあるため、必ず実施しましょう。
事前調査結果の報告義務
アスベストに関する事前調査の結果は、法改正により、一定の条件の下で報告が義務付けられています。
これは、アスベストの飛散による健康被害を未然に防ぐため、調査結果を公にすることで、適切な対策を促し、情報共有を促進することを目的としています。報告義務の対象となるのは、一定規模以上の建築物の解体・改修工事などです。
事例: 例えば、延べ面積が80㎡以上の建築物の解体、または請負代金が100万円以上の改修工事を行う場合、事前調査の結果を労働基準監督署に報告する必要があります。報告を怠った場合や虚偽の報告を行った場合は、罰則が科せられることがあります。
したがって、アスベスト事前調査を実施した場合は、報告義務の有無を確認し、必要な手続きを確実に行うことが重要です。適切な報告を行うことで、アスベストによる健康被害の防止に貢献できます。
事前調査の有資格化
アスベストによる健康被害を防ぐ法改正の一環として、事前調査は有資格者による実施が義務付けられました。
これまで、アスベスト調査は専門知識がない者でも実施可能でしたが、不適切な調査によるアスベストの見落としや、ずさんな取り扱いが問題視されていました。正確な調査と適切な処理を行うためには、専門的な知識と技術を持つ有資格者による調査が不可欠であるためです。
事前調査の有資格者化は、アスベストによる健康被害を未然に防ぎ、安全な解体・改修工事を実現するための重要な措置です。
これらの義務化により、これを読まれている皆様も業務がひっ迫するなどお困りではないでしょうか。
在住ビジネスでは、法令に則ってアスベストの事前調査を承ります。お気軽にご相談ください。
重要!アスベスト調査・除去に関連する資格
作業の安全性を確保し、法規制を遵守するために、アスベスト調査・除去に関連する資格は不可欠です。石綿作業主任者や石綿取扱作業従事者、石綿含有建材調査者など、様々な専門資格が存在します。これらの資格は、アスベストの取り扱い、調査、分析、除去計画の策定など、それぞれの専門分野における知識と技能を証明するものです。各資格の概要についてご紹介します。
①石綿作業主任者
石綿作業主任者は、2006年に導入された国家資格で、アスベストに関わる作業を行う上で非常に重要な資格です。作業現場での指揮・監督を行い、労働者の安全を守る役割を担います。
<石綿作業主任者の主な役割>
- 作業計画の作成
- 作業方法の決定
- 作業の指揮・監督
- 保護具の使用状況の監視
- 異常時の措置
これらの役割を果たすことで、アスベストのばく露を最小限に抑え、労働者の健康被害を防ぎます。石綿作業主任者は、アスベスト作業の安全性を確保するための要となる存在です。
②石綿取扱作業従事者
石綿取扱作業従事者とは、アスベスト含有建材の除去、解体等の作業に従事する際に必要な資格です。石綿障害予防規則にて「事業者は、石綿使用建築物等解体等作業に係る業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、次の科目について、当該業務に関する衛生のための特別の教育を行わなければならない。」と定められています。
引用:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/hourei/dl/hou05-21a.pdf
作業中に飛散するアスベストを吸い込むことによる健康被害を防ぐため、石綿取扱作業従事者は、作業方法、保護具の着用、飛散防止対策など、アスベストの安全な取り扱いに関する知識と技能を習得しなければなりません。作業前には、アスベストの有無を確認し、適切な保護具を着用し、作業場所を隔離するなど、安全対策を徹底する必要があります。
このように、石綿取扱作業従事者は、アスベストによる健康被害を防止するために不可欠な資格であり、安全な作業環境を確保するために重要な役割を担っています。
③石綿含有建材調査者
石綿含有建材調査者とは、アスベスト調査を行う上で必要な資格です。
建築物に含まれるアスベストの有無を調査し、その結果を報告する専門家です。2023年10月からは、原則として建築物石綿含有建材調査者 による実施が義務となりました。
<石綿含有建材調査者の種類一覧>
資格 |
概要 |
一般建築物石綿含有建材調査者
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一般建築物石綿含有建材調査者に係る講習を修了した者で、全ての建築物の調査を行う資格
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特定建築物石綿含有建材調査者
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一般建築物石綿含有建材調査者の講習内容に加えて、実地研修や、口述試験を追加したもので、全ての建築物の調査を行う資格
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一戸建て等石綿含有建材調査者
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一戸建て住宅および共同住宅の内部に限った調査(共有部分は除く)を行う資格
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※引用:石綿総合情報ポータルサイト(https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/investigator/)
調査対象となる建築物の種類によって区分されています。一般建築物石綿含有建材調査者・特定建築物石綿含有建材調査者については、試験内容が異なりますが、どちらも全ての建築物の調査を行うことができます。適切な資格を取得することで、より専門的な調査が可能になります。
④工作物石綿事前調査者
工作物石綿事前調査者は、建築物以外の工作物(プラント設備、橋梁など)におけるアスベスト含有の有無を調査する専門家です。、令和8年1月1日以降着工の工事から、工作物の解体等の作業を行うときにも、資格者による事前調査を行うことが義務となりました。
具体的な調査対象となる工作物には、煙突、ボイラー、焼却炉、鉄塔、タンクなど多岐にわたります。これらの工作物は、建築物と比較して構造が複雑であったり、使用されている建材の種類が異なったりするため、専門的な知識を持った調査者による調査が不可欠となります。
工作物石綿事前調査者は、これらの工作物におけるアスベスト含有の有無を的確に判断し、適切な対策を講じるために重要な役割を担っています。
まとめ
アスベストに関する資格取得は、安全な作業環境の確保に不可欠です。
アスベストは、過去に建築資材として広く使用されていましたが、その有害性が明らかになり、現在では使用が禁止されています。しかし、既存の建物にはまだアスベストが含まれている可能性があり、解体や改修工事の際に適切な処理が必要です。そのため、専門的な知識と技術を持った人材が求められています。
<資格取得のメリット>
- 専門知識の習得
- 法令遵守の徹底
- 安全な作業の実施
- 就職・転職の有利性
- 信頼性の向上
これらの資格を取得することで、アスベストに関する正しい知識を身につけ、法令を遵守した安全な作業を行うことができます。
しかし、これらの資格をすべて取得し、社内で業務を回すとなるとなかなか大変なのではないでしょうか。外注を検討される方も多いことかと思います。在住ビジネスでは、全国の石綿含有建材調査者(※)と連携し、調査代行を行っております。お気軽にお問い合わせください。
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