コラム

建築業界の一般的なお役立ち参考情報を掲載させていただいております。
掲載内容と異なるケースもございますので、関係機関等からの情報も併せてご確認いただければと思います。

擁壁の耐用年数と寿命|危険な劣化サイン

目次

「自宅の擁壁が古くなってきたけど、このままで大丈夫だろうか?」
「擁壁のある中古住宅の購入を考えているけど、後から高額な費用がかかったらどうしよう…」

高低差のある土地に家を建てる際、土砂の崩壊を防ぐために不可欠な擁壁(ようへき)。私たちの暮らしの安全を守る重要な構造物ですが、その寿命やメンテナンスについて詳しく知る機会は少ないかもしれません。

擁壁の耐用年数や寿命の目安、ご自身でできる危険な劣化サインのチェック方法まで解説していきます。大切な資産とご家族の安全を守るために、ぜひ最後までご覧ください。

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擁壁の種類別耐用年数と物理的な寿命

擁壁の寿命を考えるとき、まず知っておきたいのが「法定耐用年数」と「物理的な寿命」の違いです。擁壁の安全性に関わるのは、後者の「物理的な寿命」です。ここでは、それぞれの違いと、擁壁の種類ごとの寿命の目安を解説します。

法定耐用年数と物理的な寿命の違い

まず、この2つの言葉の違いを理解しておくことが重要です。

  • 法定耐用年数とは
    税法上で定められた、減価償却の計算に用いるための年数です。あくまで会計上の数値であり、擁壁が物理的に何年持つかという「寿命」を直接示すものではありません。国税庁によると、「擁壁」を指す記載はありませんが、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は最大のもので50年と定められています。(参考:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」)
  • 物理的な寿命とは
    擁壁が構造物として安全性を保ち、その役割を果たせる実際の期間のことです。この物理的な寿命は、擁壁の種類、施工品質、立地環境(日当たり、雨量、地盤など)、そしてメンテナンスの状況によって大きく変動します。

鉄筋コンクリート(RC)擁壁の寿命目安

鉄筋コンクリート(RC)擁壁は、現在最も一般的に使用されている擁壁です。コンクリートの中に鉄筋を配置することで、高い強度を誇ります。

物理的な寿命の目安は30年~50年とされていますが、これはあくまで目安です。寿命を左右する最大の要因は、内部の鉄筋が錆びるかどうかです。ひび割れから雨水が浸入し、鉄筋が錆びて膨張すると、コンクリートを内側から破壊してしまい、寿命が短くなります。

間知ブロック擁壁の寿命目安

四角錐のような形をしたコンクリートブロックを積み上げ、裏側にコンクリートを詰めて一体化させた擁壁です。

物理的な寿命の目安は、鉄筋コンクリート擁壁と同様に30年~50年程度です。ブロック自体の耐久性もさることながら、裏込めされたコンクリートや、必要に応じて配置される鉄筋の劣化具合が寿命に影響します。ブロック間の目地が劣化して、そこから水が浸入することもあります。

無筋コンクリート擁壁の寿命目安

鉄筋が入っていないコンクリートだけで作られた擁壁です。

鉄筋が入っていないため、鉄筋の錆による劣化はありませんが、引っ張る力には弱く、ひび割れが起きやすいという特徴があります。物理的な寿命の目安は20年~30年と、RC擁壁に比べて短めです。現在では、高さのある擁壁に採用されることは少なくなっています。

石積み擁壁(大谷石・玉石)の寿命目安

自然石や加工した石を積み上げて作られた擁壁です。古い住宅地でよく見られます。

  • 大谷石
    加工しやすく見た目も良いですが、非常に柔らかく水を吸いやすい性質があります。そのため風化しやすく、寿命は20年~30年程度と比較的短いのが特徴です。表面がボロボロと剥がれてきたり、内部の鉄筋が錆びていたりする場合は注意が必要です。
  • 玉石・間知石
    丸い玉石や加工した間知石を積んだ擁壁は、水はけが良いという利点があります。しかし、石と石を固定しているモルタルが劣化したり、地震などで石がズレたりするリスクがあります。定期的な点検が不可欠で、寿命を一概に言うのは難しいですが、劣化が見られたら早めの対策が必要です。

危険な擁壁の劣化サインとセルフチェックリスト

擁壁の寿命は環境によって大きく変わるため、年数だけで判断するのは危険です。重要なのは、実際に劣化のサインが出ていないかをご自身の目で確認することです。以下のチェックリストを参考に、ご自宅や購入検討中の物件の擁壁を点検してみましょう。

ひび割れ(クラック)の発生箇所と幅

擁壁の表面にひび割れがないか確認します。特に注意すべきは以下のひび割れです。

  • 幅が0.3mm以上のひび割れ
    名刺の厚み程度以上のひび割れは、雨水が浸入しやすく、内部の鉄筋を錆びさせる原因になります。
  • 横方向や斜め方向のひび割れ
    土圧や水圧によって構造的に問題が生じている可能性があり、縦方向のひび割れよりも危険度が高いサインです。
  • ひび割れから水が染み出したり、白い液体(エフロレッセンス)が出ている
    内部でコンクリートの成分が溶け出している証拠です。

擁壁のふくらみ(はらみ)

擁壁の壁面が、まるでお腹のように前面に膨らんでいる状態を「はらみ」と呼びます。これは、擁壁の背後にある土の圧力や、排水がうまくいかず溜まった水の圧力によって引き起こされます。

はらみは、擁壁が崩壊する前兆である可能性が非常に高い、極めて危険なサインです。少しでも膨らんでいるように見えたら、すぐに専門家に相談してください。

擁壁の傾き

擁壁が全体的に前に傾いていないか確認します。遠くから擁壁の側面を見てみると、傾きが分かりやすい場合があります。

傾きは、地盤沈下や想定以上の土圧が原因で発生します。これも崩壊につながる非常に危険な状態であり、早急な対応が必要です。

水抜き穴からの排水異常や土砂流出

擁壁には、内部に溜まった水を排出するための水抜き穴が一定間隔で設置されています。この水抜き穴の状態も重要なチェックポイントです。

  • 水抜き穴が詰まっている
    雨が降った後でも水が出てこない場合、内部で土砂が詰まっている可能性があります。水が抜けずに溜まると水圧が高まり、擁壁を破壊する原因になります。
  • 水抜き穴から土砂が流出している
    水と一緒に泥や砂が流れ出ている場合、擁壁の裏側の土が流出して空洞ができている可能性があります。これも擁壁の強度を低下させる危険なサインです。

古い擁壁を放置するリスクと法的責任

「少しぐらいの劣化なら大丈夫だろう」と古い擁壁を放置すると、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。

擁壁が崩壊した場合の損害賠償責任

万が一、所有する擁壁が崩壊し、隣の家を破壊したり、通行人にケガをさせたりした場合、その擁壁の所有者は「工作物責任(民法第717条)」に基づき、損害賠償責任を負うことになります。

日頃から適切なメンテナンスを怠っていたと判断されれば、多額の賠償金を請求されるリスクがあります。

土地売買時のトラブルと注意点

擁壁に問題があると、不動産としての価値が大きく下がります。

  • 売却が困難になる
    危険な擁壁がある土地や建物は、買い手が見つかりにくくなります。売却できたとしても、やり直し費用分を大幅に値引きせざるを得ないケースがほとんどです。
  • 告知義務違反
    擁壁に問題があることを知っていながら買主に伝えずに売却した場合、後から契約不適合責任を問われ、契約解除や損害賠償を請求される可能性があります。

擁壁工事で利用できる補助金・助成金

擁壁の改修工事は高額になりがちですが、費用負担を軽減するために、国や自治体が補助金・助成金制度を設けている場合があります。

多くの制度では、危険な擁壁の撤去や、安全な擁壁への作り直し(改修)工事が対象となります。がけ崩れ対策や防災・減災を目的とした制度が中心です。補修のみの工事は対象外となる場合もあるため、事前に確認が必要です。

また、補助金制度の有無や内容は自治体によって大きく異なります。まずはお住まいの地域の情報を調べてみましょう。

最も重要な注意点は、必ず工事を着手する前に申請を行うことです。交付決定前に着手した工事は、補助金の対象外となることがほとんどですので、注意してください。

在住ビジネスの地盤補償は擁壁起因も対象

擁壁の近くに住宅を建てている場合、「擁壁が壊れてしまったら建物も傾いてしまうのでは?」と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。

一般的な地盤保証では、擁壁起因の不同沈下(建物が不均一に沈下すること)が免責事項であったり、別途契約が必要になっている場合があります。

しかし、在住ビジネスの地盤補償は【擁壁起因の不同沈下も対象】です!さらに【擁壁自体の補修】も対象になりますので、広範囲のリスクをカバーしています。(※)

※法人(住宅事業者)向けのサービスになります。個人のお客様は住宅施工業者様経由にてお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。
※対象建物に沈下等の損害が生じた場合の地盤補償になりますので、擁壁単体の崩壊などの補償をするものではありません。

(※)
擁壁起因の不同沈下も補償対象で擁壁自体の修復費用まで含まれる充実した内容ではありますが、これは、地盤補強工事の際に「そもそも擁壁の崩壊があったとしても、建物は引っ張られず自立するような地盤補強工事の設計を検討している」というのが重要なポイントかつ前提となっています。

万が一、擁壁が原因で建物が傾いてしまった場合でも補償されることは業界でも珍しい内容ですが、擁壁に異常があったとしても、建物自体は自立できる地盤対策を施すように日頃より努めています。そうした在住ビジネスの経験豊富な地盤専門スタッフの技量に目を向けていただけると嬉しいところです。

擁壁の耐用年数に関するよくある質問

最後に、擁壁の耐用年数に関してよく寄せられる質問にお答えします。

補修とやり直しの判断基準は?

表面的な劣化か、構造的な問題かで判断するのが基本です。

  • 補修で対応できるケース
    軽微なひび割れや表面の欠けなど、擁壁の構造自体に影響がない場合。
  • やり直しが必要なケース
    擁壁のはらみ(膨らみ)や傾き、内部鉄筋の広範囲な錆、構造計算上の強度不足など、擁壁の構造自体に問題がある場合。

ただし、この判断を個人で行うのは非常に困難です。最終的な判断は、必ず擁壁の専門知識を持つ業者や建築士に診断を依頼してください。

擁壁に検査済証がない場合はどうする?

検査済証とは、その擁壁が建築確認申請通りに、建築基準法に適合して造られたことを証明する非常に重要な書類です。ただこれは「高さが2メートルを超える擁壁について」です。建築基準法に基づき「工作物」として建築確認申請と完了検査が必要で、検査済証が発行されることになっております。2メートル以下の擁壁においては通常発行されていないことが多いです。

その為、ある程度の規模にもかかわらず検査済証がない擁壁は、違法に造られたか、あるいは当時の基準で造られた「既存不適格」の擁壁である可能性があります。どちらの場合も、現在の基準で安全性が保証されていない状態です。このような擁壁がある土地では、住宅ローンの審査が通りにくくなったり、建物の建て替え時に擁壁のやり直しを求められたりするリスクがあります。まずは、その擁壁がいつ頃造られたものか、市役所などで建築計画概要書を調べてみることから始めましょう。

まとめ

今回は、擁壁の耐用年数と寿命について、種類別の目安から危険な劣化サイン、工事費用まで詳しく解説しました。最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。

  • 擁壁の寿命は種類や環境で変わる
    法定耐用年数はあくまで税法上の目安。物理的な寿命は、鉄筋コンクリートで30年~50年が一般的ですが、環境やメンテナンス次第で大きく変わります。
  • 「ひび割れ」「はらみ」「傾き」は危険なサイン
    ご自身で定期的にセルフチェックを行い、異常を見つけたらすぐに専門家に相談しましょう。
  • 古い擁壁の放置は大きなリスク
    万が一の崩壊事故では損害賠償責任を問われ、土地の資産価値も大きく低下します。
  • 補助金制度を活用できる場合がある
    工事の前に、お住まいの自治体の制度を確認してみましょう。

擁壁は、目立たない存在かもしれませんが、あなたの暮らしと財産を守るための大切な砦です。少しでも不安を感じたら、放置せず専門家に相談することから始めてください。

「これから家を建てる予定だが、擁壁の近くに建築するので少し不安。。。」

そういった方には在住ビジネスの地盤補償がおすすめです。在住ビジネスの地盤補償は、擁壁起因の建物の不同沈下も補償対象!さらに擁壁自体の修復も補償範囲で対応可能です。詳しくはこちらからお問い合わせください。

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※対象建物に沈下等の損害が生じた場合の地盤補償になりますので、擁壁単体の崩壊などの補償をするものではありません。詳しくは<在住ビジネスの地盤補償は擁壁起因も対象>の段落をお読みください。

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