「もしかして、うちの壁や天井の石膏ボードにアスベストが…?」
古い建物にお住まいの方や、リフォーム・解体を控えている方にとって、石膏ボードのアスベスト含有は大きな不安要素ですよね。
この記事では、そんな不安を解消するために、石膏ボードにアスベストが含まれているかどうかの見分け方、アスベストが使用されていた年代、メーカーごとの情報、そして万が一アスベストが見つかった場合の対処法まで、専門知識がない方にも分かりやすく解説します。
ご自身やご家族の健康を守るため、そして安全な住環境を実現するために、ぜひ最後までお読みください。
目次
石膏ボードのアスベスト含有とは
まず、なぜ石膏ボードにアスベストが使われていたのか、そして現在の状況について理解を深めましょう。
石膏ボードとアスベストの関係
石膏ボードとは、硫酸カルシウムを主成分とする「石膏」を板状にした建築材料で、耐火性、防火性、遮音性、施工の容易さなどから、住宅やビルの壁、天井などに広く使われています。
過去には、この石膏ボードの強度や耐火性をさらに高める目的で、アスベスト(石綿)が混ぜられて製造されていた時期がありました。アスベストは安価で耐久性に優れた繊維状の鉱物ですが、その粉じんを吸い込むと深刻な健康被害を引き起こすことが後に判明しました。
アスベストが使用された背景
アスベストが建材に広く使用された背景には、その優れた特性と経済性がありました。
- 耐火性・断熱性・防音性: 火に強く、熱や音を伝えにくい。
- 耐久性・耐薬品性: 丈夫で薬品にも強い。
- 加工のしやすさ: 様々な形状に加工しやすい。
- 経済性: 安価で入手しやすかった。
これらの理由から、1970年代から1990年代初頭にかけて、多くの建材にアスベストが利用され、石膏ボードもその一つでした。
現在の石膏ボードの安全性
現在日本国内で製造・販売されている石膏ボードには、アスベストは一切使用されていません。
アスベストの健康被害が明らかになった後、日本では段階的に規制が強化され、2006年(平成18年)9月1日以降は、アスベストおよびアスベストを0.1重量%を超えて含有する全てのものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則禁止されています。(参考:厚生労働省「アスベスト全面禁止に係るパンフレット」)
したがって、比較的新しい建物や、近年リフォームで交換された石膏ボードについては、アスベスト含有の心配は基本的にありません。問題となるのは、主に規制以前に建てられた古い建物に使用されている石膏ボードです。
アスベスト含有石膏ボードの見分け方
「うちの石膏ボードは大丈夫…?」と心配な方のために、アスベスト含有の可能性がある石膏ボードを見分けるためのポイントを解説します。ただし、最終的な判断は専門家による調査が必要であることを念頭に置いてください。
見た目での確認ポイント(色・模様)
残念ながら、アスベスト含有石膏ボードと非含有の石膏ボードを、見た目だけで確実に見分けることは非常に困難です。 アスベストは非常に細かい繊維であり、石膏ボードの内部に混ぜ込まれているため、表面からアスベスト繊維が直接見えることは稀です。
しかし、以下のような場合は注意が必要です。
- 古い石膏ボードであること
製造年代が古いほど、アスベスト含有の可能性は高まります。 - 特定の模様や刻印
一部の古いアスベスト含有建材には、特有の模様やメーカーの刻印が見られる場合がありますが、これだけで判断するのは難しいです。 - 劣化や破損
石膏ボードが割れていたり、粉っぽくなっていたりする場合、もしアスベストが含まれていれば飛散するリスクがあります。
「アスベスト含有の可能性がある石膏ボードの色や模様の特徴は…?」
明確な色や模様の基準はありません。インターネット上には様々な情報がありますが、見た目だけでアスベストの有無を断定するのは危険です。
製品情報(品番・ラベル)での確認
最も確実な手がかりとなるのは、石膏ボード自体やその梱包材に記載されている製品情報です。
- 製品名・品番
メーカーや製品によっては、品番からアスベスト含有の有無が判別できる場合があります。 - 製造年月日・ロット番号
製造された時期が分かれば、アスベスト規制の時期と照らし合わせて推測できます。 - JISマーク・認定番号
古い製品の場合、JISマークの有無や認定番号が手がかりになることがあります。 - メーカー名
メーカーのウェブサイトで過去の製品情報を公開している場合があります。
「石膏ボードの品番やラベルはどこで確認できる…?」
通常、石膏ボードの裏面や端、あるいは施工時の端材、設計図書、仕様書などに記載されていることがあります。しかし、施工後は壁や天井の内部に隠れてしまうため、確認は容易ではありません。リフォームや解体で壁を開ける機会があれば、確認のチャンスです。
前述のとおり、自己判断でアスベストを見分けることは非常に困難かつ危険です。
在住ビジネスではアスベストが含有されているかどうか判断する際に必要な「建築物石綿含有建材調査者」の資格を持つ者が対応しております。全国対応しておりますので、お困りでしたらお気軽にお問い合わせください。
アスベスト含有の年代と製品種類
アスベストが石膏ボードに使用されていた時期や、特に注意が必要な製品種類について解説します。
アスベスト使用の主な製造年代
石膏ボードにアスベストが使用されていた主な期間は、一般的に1955年頃から2004年頃までとされています。特に、1970年代から1980年代後半(おおよそ1975年~1988年頃)に製造された石膏ボードには、アスベストが含まれている可能性が高いと考えられています。
- 1975年(昭和50年): 特定化学物質等障害予防規則の改正により、アスベスト含有率が5重量%を超える吹き付けアスベストが原則禁止。
- 1995年(平成7年): アスベスト含有率が1重量%を超える吹き付けアスベストが原則禁止。
- 2004年(平成16年)10月1日: アスベスト含有建材(石綿スレート、石綿押出成形セメント板など10品目)の製造、輸入、使用などが禁止。この中に石膏ボードも含まれる場合があります。
- 2006年(平成18年)9月1日: アスベストおよびアスベストを0.1重量%を超えて含有する全てのものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則禁止。
建物の年代を特定する手がかりとしては、以下のようなものがあります。
- 建築確認済証や検査済証: 建物の建築年月日が記載されています。
- 登記簿謄本(登記事項証明書): 新築年月日が記載されています。
- 過去のリフォーム履歴: リフォームの際に石膏ボードを交換していれば、その時期の製品が使われている可能性があります。
これらの情報から、おおよその建築・改修時期を把握し、アスベスト使用の可能性を推測することができます。
化粧石膏ボードのアスベスト
化粧石膏ボードとは、石膏ボードの表面に化粧紙や塗装、エンボス加工などを施し、デザイン性を高めたものです。壁や天井の仕上げ材としてそのまま使用されることがあります。
古い年代の化粧石膏ボードにも、アスベストが含まれている可能性があります。 特に、耐火性や強度を高める目的で、基材となる石膏ボード部分にアスベストが混入されていたケースが考えられます。
ラスボード・有孔ボードのアスベスト
- ラスボード(石膏ラスボード)
主に壁や天井の下地材として使用され、この上に左官材(塗り壁材)を塗って仕上げます。表面に凹凸や孔があり、左官材の付着を良くする工夫がされています。 - 有孔石膏ボード(穴あき石膏ボード)
吸音性を高めるために、ボード表面に多数の孔が開けられています。音楽室やホール、オフィスなどで使用されることがあります。
これらの特殊な石膏ボードも、製造年代によってはアスベストを含んでいる可能性があります。 特に古い建物で使用されている場合は注意が必要です。
メーカー別のアスベスト含有情報が知りたい場合
アスベストが含有されているかどうか知りたい場合は、各メーカーに問い合わせる方法があります。
各メーカーのウェブサイトには、アスベストに関する問い合わせ窓口が設けられている場合がありますので、以下の情報を準備して問い合わせるとスムーズです。
- 建物の建築年月日
- 石膏ボードの製品名、品番、ロット番号(分かれば)
- 石膏ボードが使用されている場所(壁、天井など)
また、国土交通省のウェブサイトでも、アスベスト含有建材に関する情報が提供されています。ぜひ参考にしてみてください。
- 国土交通省 「石綿(アスベスト)含有建材データベース」
アスベスト含有時の対処と調査
もしご自宅の石膏ボードにアスベストが含まれている疑いがある場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
個人でできる確認方法
「自分でアスベストの有無を安全に確認する方法はありますか…?」
個人でできる範囲は限られています。
- 目視による確認: 石膏ボードのメーカー名、製品名、ロット番号、JISマークなどを確認します。ただし、石膏ボードを割ったり、削ったり、穴を開けたりする行為は、アスベストが飛散する可能性があるため絶対に避けてください。
- 書類による確認: 設計図書、仕様書、リフォーム時の契約書などを確認し、使用された建材の情報を探します。
- メーカーへの問い合わせ: 製品情報が分かれば、メーカーに問い合わせてアスベスト含有の有無を確認します。
重要なのは、無理に自分で判断しようとせず、専門家に相談することです。
専門業者によるアスベスト調査
アスベストの含有の有無を確実に判断するためには、専門業者による分析調査が必要です。
「アスベスト調査はどこに頼めばいいですか…?」
アスベスト調査は、以下のような専門知識と資格を持つ業者に依頼しましょう。
- 建築物石綿含有建材調査者 の資格を持つ者が在籍している業者
- アスベスト分析機関(作業環境測定機関など)と連携している業者
- 解体業者やリフォーム業者でも、アスベスト調査に対応している場合があります。
都道府県や市町村によっては、アスベスト調査に関する相談窓口を設けている場合もあります。
在住ビジネスでは、全国の「建築物石綿含有建材調査者」と連携し、アスベスト調査を行っております。まずはお気軽にお問い合わせください。
アスベスト調査の流れと費用
「アスベスト調査にはどれくらいの費用と時間がかかりますか…?」
一般的なアスベスト調査の流れと費用の目安は以下の通りです。
- 事前相談・見積もり
建物の状況や調査範囲などを伝え、見積もりを取ります。 - 現地調査・試料採取
専門家が現地を訪問し、疑わしい建材から分析用の試料を採取します。この際、アスベストが飛散しないよう慎重に作業が行われます。 - 分析
採取した試料を専門の分析機関で分析し、アスベストの含有の有無や種類を特定します。 - 報告書作成・結果報告
調査結果をまとめた報告書が作成され、依頼者に報告されます。
費用は、調査範囲、試料の数、分析方法などによって大きく異なりますが、一般的には数万円から十数万円程度が目安です。複数の業者に見積もりを依頼し、内容を比較検討することをおすすめします。
期間は、試料採取から報告書作成まで、通常1週間から2週間程度かかることが多いです。
在住ビジネスでは、アスベスト調査の代行を承っております。下記のお問い合わせボタンからお見積もり依頼が可能です。また、検体採取や分析調査も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
アスベストの危険性と処分方法
アスベストの危険性や、万が一アスベスト含有石膏ボードが見つかった場合の適切な処分方法について解説します。
アスベストの危険性レベル
「石膏ボードのアスベストはどのくらい危険なのですか…?」
アスベスト建材の危険性は、アスベストの飛散のしやすさ(発じん性)によって、主に3つのレベルに分類されます。
- レベル1(発じん性が著しく高い): 吹付けアスベストなど
- レベル2(発じん性が高い): アスベスト含有保温材、耐火被覆材、断熱材など
- レベル3(発じん性が比較的低い): アスベスト含有成形板(石膏ボード、スレートボードなど)
石膏ボードに含まれるアスベストは、一般的に「レベル3」に分類されます。 これは、アスベストがセメントなどの固化材で固められているため、通常の状態では飛散しにくいとされるものです。
しかし、解体や破砕、劣化によって破損した場合には、アスベスト繊維が飛散するリスクがあります。
健康への影響と飛散リスク
アスベスト繊維を吸い込むと、長い潜伏期間を経て以下のような深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。
- 肺がん
- 中皮腫(胸膜や腹膜のがん)
- 石綿肺(じん肺の一種)
- びまん性胸膜肥厚
石膏ボードが健全な状態であれば、直ちに健康被害が発生するリスクは低いと考えられます。 しかし、リフォームや解体、地震などで石膏ボードが破損すると、アスベスト繊維が空気中に飛散し、それを吸い込んでしまう危険性があります。
石膏ボードの適切な処分手順
「アスベストが含まれる石膏ボードはどうやって処分すればいいですか…?」
アスベストを含有する石膏ボードは、「特別管理産業廃棄物」として法律に基づき適切に処理する必要があります。
- 個人での処分はできません。
- 専門の産業廃棄物処理業者に依頼する必要があります。
- 解体・撤去作業も、アスベストの飛散防止措置を講じることができる専門業者に依頼しなければなりません。
不適切な処理は、作業者だけでなく周辺住民にも健康被害を及ぼす可能性があるため、絶対に避けなければなりません。
解体・撤去費用の相場
アスベスト含有石膏ボードの解体・撤去費用は、非含有の場合と比較して高額になる傾向があります。
費用には、以下のようなものが含まれます。
- 養生費用: 作業場所を隔離し、アスベストが外部に飛散しないようにするための費用。
- 作業員の保護具費用: 防じんマスク、保護衣など。
- 除去作業費: 手作業による丁寧な撤去作業。
- 特別管理産業廃棄物としての処分費用: 通常の廃棄物より高額になります。
- 各種届出費用: 行政への届出が必要な場合があります。
費用の相場は、除去する面積やアスベストのレベル、作業環境などによって大きく変動します。 一般的には、数万円から数十万円、大規模な場合はそれ以上かかることもあります。
必ず複数の専門業者に見積もりを依頼し、作業内容と費用を十分に確認しましょう。
まとめ
今回は、石膏ボードのアスベスト含有に関する見分け方、年代、対処法などについて詳しく解説しました。
- 古い石膏ボードにはアスベストが含まれている可能性があります。 特に1970年代から1980年代後半の製品は注意が必要です。
- 見た目だけでアスベストの有無を判断するのは困難です。 製品情報(品番、製造年など)やメーカーへの問い合わせが手がかりになります。
- 最終的な判断は専門業者による分析調査が必要です。 自己判断で石膏ボードを割ったり削ったりするのは危険です。
- アスベスト含有が疑われる場合は、まず専門業者に相談しましょう。 安全な調査と適切な対処法を提案してくれます。
- アスベスト含有石膏ボードの処分は、専門業者に依頼する必要があります。
アスベストの問題は複雑で不安に感じることも多いと思いますが、正しい知識を持って適切に対処すれば、リスクを最小限に抑えることができます。
「アスベストが含まれていないか不安」「調査したいが知識も時間もない」
こういったお悩みをお持ちの方は、是非在住ビジネスのアスベスト調査をご検討ください。