コラム

確認申請が必要な「大規模修繕・模様替」を整理しよう(リフォーム向け①)

2025年4月から施行された建築基準法改正では、新築のみならず、リフォーム分野でも非常に大きな変更がありました。むしろリフォーム業界の方が、大変革の内容かと思います。
法改正がある度に必ず浮上するのが「既存不適格物件」の話になります。
建築した当時は法適合していた建物が、法改正により現行法に適していないことになった「既存不適格」と「違法建築」とでは、全く前提条件が異なります。
その曖昧であった部分を「今後は確認申請を必要とさせることで、チェックしていきますよ。」と変わることになりました。
そもそも確認申請が必要となる「大規模修繕・模様替」とはどういうものか?
また、リフォームの対象箇所だけではなく、建物全体を「法適合」させなければならいとはどういうことか?
非常に大きな改正点になりますので、リフォーム分野の法改正については、次回コラムを含めて2回に渡り、お話しできればと思います。

▽前回までのコラム記事はこちら
https://zaijubiz.jp/column/
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1.そもそも「大規模な修繕・模様替」とは?

今回の建築基準法改正で従来の4号建築物のほとんどが2号建築物となったこと、また、確認申請の対象範囲が変更になったことなどを、前回のコラムでお話しさせていただきました。その中で、注目すべき点は、新2号建築物の中に「大規模な修繕・模様替」が含まれることになったことかと思います。
つまり、新築だけに留まらずリフォーム分野にまで、確認申請の波が押し寄せてきたことになります。
今まで確認申請と縁が無かったリフォーム専門業者にとっては、根耳に水、青天の霹靂と言ったところかと思います。
何故このような流れになってきたのか?
全国的に圧倒的に数が多い平屋住宅・2階建住宅は4号特例により、今まで構造審査が省略されてきて、曖昧になってきた部分が多いです。
それが、新築においては省エネ性能の向上に合わせて、構造面においても耐震性をきちんと確認していくようになったのが、世の中の流れです。
そうなると、既存住宅は今のままでいいのか?
4号特例で審査省略してきた既存住宅も、次の何らかの工事を行う際には法適合してるかどうか確認したほうが良いんじゃないか?
このような流れで、今回の法改正では「まずは、大規模修繕・模様替を行う時だけでも確認申請してもらってチェックしましょう」という事になったと言えます。

ここでまず大事なのは「大規模修繕・模様替」の定義をきちんと理解することです。
それは、建築基準法上ではどのように定義されているかを確認しましょう。

建築基準法 第1章2条14・15項

 大規模な修繕  建築物の主要構造部の一種以上について行う「過半」の修繕をいう。
 大規模な模様替  建築物の主要構造部の一種以上について行う「過半」の模様替をいう。

「修繕」の定義は「同じ位置に概ね同じ材料を用いて造り替え、性能や品質を回復する工事」のことを指しますが、例えば、板張り外壁を板張り外壁に変えるなどの例だとわかりやすいかと思います。また、「模様替」「同じ位置でも異なる材料や仕様を用いて造り替え、性能や品質を回復する工事」のことを指し、例えば、木造柱を鉄骨柱に変えたなどが、それに値します。
これらが建築基準法上での定義になりますが、要するに大規模か否かは、工事をしようとしているその部位の半分以上を、造り替える工事なのか否かという理解でよろしいかと思います。ただ、この「過半(半分以上)」についても、判断に違いが出てしまいそうですね。
そこに関しては、「建築確認のための基準総則・集団既定の適用事例」に解説が記載されていますので見て見ましょう。
基本的には、過半の判断は主要構造部ごとに行うとあり、以下の割合に対して過半に該当するかどうかを判断するというのが基本的な考え方になります。

主要構造部ごとの数量割合

 柱・梁  それぞれの総本数に占める割合
 壁  その総面積に占める割合
 床・屋根  それぞれの総水平投影面積に占める割合
 階段  その階ごとの総数に占める割合

では、こうなってくると改めて「主要構造部」について正確に理解しておいた方がよろしいかと思います。普段意識していないと、概念が曖昧になりがちですが、「柱や床は全て主要構造部でしょ?」と思いがちになりませんか?
建築基準法の中では、このように定義されてますので、改めて確認しておきましょう。

建築基準法第1章2条5項

主要構造部は、壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。

設計担当の方には、釈迦に説法で大変恐縮ですが、結構重要な基本的な知識になります。
柱は柱でも、間柱や付け柱、また床も最下階の床などは、主要構造部に含まれません。
こういった、主要構造部を正確に理解した上で、それぞれの構造部の過半以上の修繕又は模様替を行う工事は、「大規模な修繕・模様替」となるという事です。

このような構造体に広く影響を及ぼしそうな工事になりそうなときは、施工を急がず、各自治体にて確認の上、お施主様に正確に説明して手続きを進める必要があるという事です。
ここまでの基本的な定義を理解した上でも、実際は迷う場面も多いかと思います。
次に、実際によくある質問例にて見ていきましょう。

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2.確認申請が必要かどうかの判断について

国土交通省が公開している資料で「屋根及び外壁の改修に関する建築基準法上の取扱いについて」があります。
屋根工事でありがちな内容が記載されておりますので、一例として取り上げてみましょう。

Q.主要構造部である下地材は施工対象ではなく、「屋根ふき材のみ」の改修の場合は?
A.「大規模修繕・模様替」には該当しません

Q.既存の屋根の上に新しい屋根をかぶせる場合(カバー工法)は?
A.「大規模修繕・模様替」には該当しません

Q.主要構造部である下地材は施工対象ではなく、「外壁材のみ」の改修の場合は?
A.「大規模修繕・模様替」には該当しません

Q.主要構造部である下地材は施工対象ではなく、「内側から断熱材のみ」の改修の場合は?
A.「大規模修繕・模様替」には該当しません

と、このような具合のQ&Aになります。

ただ、これは確認申請が必要になるか否かの視点だけで見れば、このようなシンプルな〇×判断となりますが、実際は防火等の兼ね合いもありますので、正確には「あくまでも例であり、実情に見合った判断が必要です。」というのが正解になります。
つまり〇×判断ではなく、「△」が正しい正解という事になります。
これは、行政関係者の方からの説明でもありますが、この件に関する判断は、各自治体によって判断がわかれるとのことで、正式には「事前に各自治体のホームページ等で確認の上、又は建築主事に確認の上」対応することが望ましいという事になっております。
単純なQ&Aでは判断できないという事になります。

例えば、当社においてこのような質問を受けたことがあります。

Q.屋根ふき材のみの改修の予定だったが、剝がしてみたら下地材(構造体)も痛みがひどく、改修の必要性が発生したら、工事は止めなければいけないか?

これは、そもそも主要構造部に影響しないように施工を済ませようとしていたケースですが、施工に着手して初めて構造体まで修繕しないといけない状況だったことがわかったケースです。この場合、下地材の改修が過半以上に至ると判断できるのであれば、工事を止めて確認申請を実施しなければならないのが原則になります。
しかし、この場合も先に述べたように各自治体により、最も判断が分かれそうな事例になるため、確認しながら進めていく必要があります。

確定的な判断で進められないのが、大変悩ましいところかと思います。
特にこういった件は、お施主様に事前に「法改正により、このようなことになるかもしれない」旨の説明を丁寧にしておくことが重要でしょう。
当然ですが、お施主様は建築関係者より、法改正の知識がないです。
事前の説明が無いと「騙されているのではないか?」と不安になります。
そのため、少なくとも建築する側はリフォームにおいても、正確に法改正の内容を理解しておく必要があるでしょう。

そして、もう1つリフォーム業界で大変悩ましい改正点があります。
それは、「既存不適格物件の法適合の原則」の話になります。

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3.リフォームしない箇所も法適合しなければならない?

Q.構造体一種だけが該当する大規模修繕なのに、既存不適格物件だと建物全体を「現行法の規定に適合する」ように施工しなければならないって本当ですか?

こういった質問が増えてきました。
一般的には、リフォームや修繕工事は建物の一部に対する施工が基本かと思います。
その為、施工対象箇所以外がどのような状態かどうかは、気にしてこなかったかと思います。もちろん、お施主様にとっても予算の関係がありますので、「この部分だけ直してもらえればよい」というのが普通でしょう。
その辺の双方の当たり前の認識が、今後は変わってしまう大きな改正ポイントなります。
先ほどまでお話しさせていただいた内容は、「確認申請が必要か否か」の論点になりますが、この話は、「確認申請が必要だろうが不要だろうが、建物全体を現行法に適合させなければならない」という大原則の話であり、論点が変わります。

この4月以降から法改正となりましたので、基本的にはそれ以前の建築物は「既存不適格物件」になると考えると、今後リフォーム工事を請け負う際は、例えばお施主様が「屋根だけ直してくれればいい」と言っても、屋根以外の部分も現行法に適合しているようにしないといけないという事になります。
これは、一歩間違えれば、お施主様は「頼んでない箇所も工事を勧めてくる悪徳リフォーム会社だ」と受け取る可能性があります。その為、とても重要な内容になります。
これらのことは、国土交通省が2025年3月に公開した「既存建築物の現況調査ガイドライン(第2版)」に、詳しく記載しております。
この詳細に関しては、重要度も高く、ボリュームもあるため次回コラムでポイントを整理してお話しさせていただければと思います。
原則だけを見れば、大変厳しい内容ですが「既存不適格の緩和措置」も設けられておりますので、少し安心していただいても良いかもしれません。

いずれにしても、これらの法改正の流れを皆様はどのように見ますでしょうか?間違いなくリフォームの難易度は上がるでしょう。ましてや、大規模修繕・模様替においてはやり慣れていない工務店では、請けない事業者も増えるのではないでしょうか?

ここからは、私見になりますが、国側としては既存の建物(特に古い建物)は、「直すより建替え」を進めて新築にしていってほしい。というのが本音ではないかなと推測してしまいます。
なぜなら、どうしても2050年カーボンニュートラルが頭をよぎります。
そもそも省エネ法改正の影響で、建築基準法の改正にも影響を及ぼしています。
根底には省エネの流れがあると考えます。
2050年には、新築だけではなくストック住宅も含めて温室効果ガスを全体として排出ゼロにするというのが大きな目標です。
そう考えると、省エネ性能が低い既存住宅においては、もはや直すのではなく建替えて省エネ性能が高い新築住宅に切り替えていってほしいというメッセージを感じてしまいます。
皆様はどう感じますでしょうか?
個人的な考えに話がそれてしまいましたが、次回はこの「既存不適格の緩和措置」について、重要なポイントはお話しさせていただければと思います。

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