コラム

地震に強い家づくりを考える ー壁倍率ではわからない本当の強さー

前回のコラムでは能登半島地震から1年の節目において、本地震後の余震が繰り返し発生することから、住み続けられる住まいづくりが重要で、そのために倒壊シミュレーションソフト「wallstat」が有効であるお話をさせていただきました。
建築基準法では、建物倒壊による圧死を防ぐために「極めて稀な大地震でも倒壊しない」建物を最低基準として定めております。
では、このような考え方にはどのような歴史があったのでしょうか?
また壁倍率だけで本当に耐力面材の強さはわかるのでしょうか?
wallstatは、机上の計算での安心ではなく、全ての建築部材の「本当の強さ」を見える化してくれます。
本コラムでは、「壁倍率」と「実験データ」の決定的な違いをお話しさせていただきます。

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https://zaijubiz.jp/service/wallstat/

1.壁量基準の歴史と壁倍率

そもそも、日本は世界的にも地震が多い国であることはご存じのとおりです。
例えば、地震地域係数は国内で最も低いのが沖縄の「0.7」ですが、比較しても海外では、約1/10~1/2程度で圧倒的に日本の耐震基準が高いことが見てとれます。
その上で、昨年の能登半島地震は地震地域係数が「0.9」の地域を中心に発生し、係数が低い地域での大地震だったことより、国は「地震地域係数の見直し」の検討を進めることになりました。

▽日本経済新聞News「耐震性能の地域差、見直しを 国交省の有識者委」参照
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA017SP0R01C24A1000000/
地域係数:地域ごとの地震リスクに応じた補正係数。建物の耐震能力を保証する耐震基準から割り引いて良いことになっている。

地震の歴史を振り返りましょう。

1923年 関東大震災
1948年 福井地震
1995年 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
2011年 東日本大震災
2016年 熊本地震
2024年 能登半島地震

明治以降の代表的な地震を記載させていただきました。記憶にあたらしい所では1995年兵庫県南部地震での死者は6,000人を超え、多くが木造住宅の倒壊による圧死と言われています。

未曽有の大地震に対して建物を倒壊させないことは重要な課題ではありますが、この原点となる考え方のきっかけとなったのが、1948年の福井地震と言われており、この時から学者たちが倒壊し建物の調査を進め「壁が多い建物ほど被害が少ない」ことを確認したことが壁量基準の始まりと言われております。
そして、1950年に建築基準法が制定されることになる流れになります。

壁量基準と必要壁量が定まったことで、様々な耐力壁が開発されることになり、「壁倍率」という考えが誕生することになります。これらの背景から言えることは、現代にいたるまで業界全体の「目的」は、「倒壊による死者を出さない」という事に一直線で向かってきたという事です。その成果もあり、2025年4月の建築基準法改正を迎える前の建築物でも、初回の大地震で倒壊してしまうことは極めて稀なこととなりました。

今後、建築業界全体が目指すべき「目的」は、「倒壊せず、住み続けられる住まいづくり」ではないでしょうか?
倒壊しなかった建物は、次の大地震(余震)にも耐えられるのか?
同じ壁倍率の耐力面材であれば、実施の損傷度合いも本当に同じなのか?

こういった疑問や課題に取り組むフェーズに来ているのかもしれません。

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2.壁倍率だけではわからない耐震性能をwallstat検証

「同じ壁倍率の耐力面材であれば、実施の損傷度合いも本当に同じなのか?」

結論から申し上げますと、同じ壁倍率の耐力面材でも、部材によっては実際の地震発生時の耐力は「粘り」の強さで大きな差が出ることがあります。設計上の基準をクリアするための目安が壁倍率であって、実際の地震に強いかどうかは、壁倍率だけでは判断できず、各メーカーの実験データを比較するしかないでしょう。
ただ、知識のない方が実験データを見てもわかりにくいものです。これを視覚的に比較検討できるのが「wallstat(ウォールスタット)」だと理解いただければよいと思います。

では、壁倍率の決まり方について解説します。 以下が、あるメーカーの実験データになります。

これは、ある耐力面材を一定方向に破壊されるまで力を加えた実験データです。
実験データには、①Py②P1/120rad③Pmax④Puと4つの指標があります。
しかし壁倍率は最も低いPyの数値で決まります。
つまり、実際は最大耐力までの粘りを見せる部材であっても、計算上は使わないデータという事になります。つまり、計算上は同じ強さの壁面材であっても実際の地震が起きた時には、この隠された粘りの強さで生死を分ける可能性があるとも言えます。

wallstatでは各部材の実験データそのものをパラメータとして取り入れるため、構造計算や壁量計算では出てこない部分を可視化することができます。これが「壁倍率による計算上の机上の強さ」と「実験データを基にした建物の本当の強さ」という事になります。

今後は、業界全体が後者を意識して取り組んでいく必要があるのではないでしょうか?

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3.wallstatで建材選定と新壁量基準で住み続けられる住まいづくり

ここで、耐力面材メーカー2社の実験データをもとに解説させていただきます。
どちらも同じ壁倍率2.5倍の建材になります。

許容応力度計算でも壁量計算でもいずれも壁倍率2.5倍の耐力面材ですが、計算上は出てこない「その後の粘り」の部分で大変大きな差が確認できます。
青線の耐力壁は、地震発生時だけではなく、その後の余震にも耐えうる粘り強さが比較的高いと言えます。
実際、各社の実験データを入手してグラフ上での比較検討はできても、どのくらいの地震にどの程度耐えられるかは、わからないものです。
wallstatは、その本当の力を可視化できるので、使用建材の選定に大変有効と言えます。
2025年4月からいわゆる4号特例縮小により基本的な耐震性能は上がります。現行基準の1.4~1.6倍の壁量の増加が見込まれると言われております。
ベースとなる必要壁量の引き上げと合わせて、本当に強い耐力建材の選定を行い、住み続けられる住まいの提供を目指してみてはいかがでしょうか?
他社との差別化はもちろん、検証動画をお施主様に見せていくことで本当の安心の提供が可能になります。

▽wallstatソフトダウンロードはこちら
https://support.wallstat.jp/wallstat5s-download/

▽wallstat入力検証代行に関するお問い合わせはこちら
https://zaijubiz.jp/contact/

※在住ビジネスは、(一社)耐震性能見える化協会の事務局としても活動しております。

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