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コラム

耐震性能シミュレーションソフト「wallstat」とは? 何ができるのかを見ていこう

 近年、能登半島地震をはじめとする大地震の頻度が高まる中、8月には初めて南海トラフ地震臨時情報が出るなど、国内全体で耐震性能を意識される施主様が増えています。そして私たち木造住宅の建築を担う建築業でも耐震性能を高めた家づくりを進めなければなりません。私たちを助けるツールとして、今では地震にどのくらい耐えられるのかシミュレーションできる「wallstat(ウォールスタット)」があります。そこで今回wallstatがどのようなソフトなのか、そして建築業で働く私たちがどのように活かせるのか、解説します。

1, 耐震性能シミュレーションソフト「wallstat」とは

 wallstatとは、京都大学生存圏研究所の中川貴文准教授によって開発された耐震性能シミュレーションソフトです。本ソフトでは約1億円相当の費用が掛かるといわれる実大の振動台実験でなければ分からなかった「どこが最初に破壊するのか」、「どのような過程を経て倒壊するのか」、「どの程度の揺れまで耐えられるのか」等の耐震性能を可視化し、安心を提供するための構造を解析することができます。構造図を元に入力すると、地震動を加えた際の建物の損傷や倒壊過程、建物が一部破壊し、さらに倒壊するまでを計算し、視覚的に確認することができます。

 さらに、wallstat最大の特徴は過去日本国内で起きた実際の大地震の地震波でもって検証できることです。例えば、過去多くの被害を及ぼした下記地震の地震波を用いて検証することができます。(一例)

・阪神淡路大震災(兵庫県南部地震/1995年)
・新潟県中越地震(2004年)
・東日本大震災(東北地方太平洋沖地震/2011年)
・熊本地震(2016年)の前震・本震
・北海道胆振東部地震(2018年)
・令和6年能登半島地震(2024年)

 以上のように、実際の地震波を用いて実大の振動台実験と同等の結果をパソコンの画面上で手軽に得ることができます。

2,wallstatを家づくりでどう活用できるのか

 wallstatがどのようなものか見えたところで、建築業である私たちがどのように活用できるのでしょうか。活用例は大きく2つあります。

①設計上の建物の弱点を建てる前に確認できる

 まず1つ目は「設計上の建物の弱点を建てる前に確認できる」ことです。家づくりをするにあたり、住宅の構造設計の過程の中で検証しながら進めることができます。推奨したいのは、まずは初期設計の段階でwallstatを用いて検証することで、地震が起きたときの損害する可能性がある箇所を可視化することができ、設計上の問題点を早い段階で確認、改善が可能となります。それにより、地震による損害を少しでもなくし、良い家づくりへと活かすことができます。すでに完成している建物で検証する認識のユーザーも多く見受けられますが、設計過程で活用することが重要です。

②お施主様に動画で見せられることで耐震性能をわかりやすく伝えられる

 2つ目は、「お施主様に動画で見せられることで耐震性能をわかりやすく伝えられる」ことです。冒頭にも書いた通り、昨今地震の頻度が高まり、耐震性能を意識されているお施主様が増えてきています。現在、一部の工務店などで実際に取り組まれている例として、家づくりをしている段階や引き渡すタイミングなどで、wallstatの検証動画を見せながら耐震性能について説明するという手法が挙げられます。実際の検証動画を見せながら説明することで、施主様の不安を取り除くことが見込めます。

 以上のように、wallstatは木造住宅の建築を担う工務店にとって多くの可能性を秘めています。住宅を設計する建築士の安心と実際に入居するお施主様の安心を支えるツールとして認識していただければと思います。入力においては、かなりバージョンアップも進み使いやすくなってきておりますが、最低限の建築知識と経験は必要になります。

 wallstatの活用にご興味ある方は、「一般社団法人耐震性能見える化協会(https://wallstat.jp/)」にて、定期的に講習会を開催しておりますので、ご参加されることをお勧めいたします。

在住ビジネスは、当該協会と連携しながら住宅の耐震性のサポート業務を行わせていただいております。

 なお、入力するには、正確な検証結果を求めるほど、必要な情報は多いほうが良く、意匠図と構造図は必須となります。あるいは、外注をする際は中間フォーマットであるCEDXMデータがあるとより円滑に依頼ができるので、もし外部にご依頼をする際は参考にしていただければ幸いです。

3,終わりに

 今回は耐震性能シミュレーションソフトwallstatについて解説しました。wallstatがどのようなものか見えてきたでしょうか。また、在住ビジネスではwallstatの入力・検証代行も行っておりますので、ご興味ある方は下記リンクより詳細をご確認頂けますと幸いです。次回も新たなテーマについて解説いたします。

▽wallstatの入力・検証代行の詳細についてはこちら▽
https://zaijubiz.jp/service/wallstat/

▽日刊木材新聞「wallstat特集」に取材記事が掲載されました▽
https://zaijubiz.jp/news/2024-09-04/

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