コラム

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掲載内容と異なるケースもございますので、関係機関等からの情報も併せてご確認いただければと思います。

確認申請の4号特例が廃止!2025年からの変更点をわかりやすく解説

目次

「マイホームを建てようと思ったら、2025年から法律が変わって手続きが大変になるって本当?」
「4号特例が廃止されると、コストやスケジュールにどんな影響があるの?」

これから家を建てる方や、建築に携わる方にとって、2025年に施行された建築基準法の改正は大きな関心事ではないでしょうか。特に、これまで多くの木造住宅で適用されてきた「4号特例」が廃止・縮小されたことは、家づくりに大きな影響がありました。

この記事では、建築の専門家でない方にも分かりやすく、以下の内容を解説します。

  • そもそも「4号特例」とは何か
  • 法改正で何が、いつから変わるのか
  • 建築コストや工期にどんな影響があるのか
  • これから家を建てる人が準備すべきこと

法改正は一見難しく感じられますが、ポイントを押さえれば大丈夫です。この記事を読んで、変更点を正しく理解し、安心して家づくりを進めるための準備を始めましょう。

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そもそも4号特例とは?

法改正の内容を理解するために、まずは「4号特例」と、その対象となる「4号建築物」について基本からおさらいしましょう。

4号建築物の定義と具体例

4号建築物とは、建築基準法第6条第1項第四号に定められた、比較的小規模な建築物のことです。
私たちの暮らしに最も身近な建物が多く、具体的には以下の条件に当てはまるものが該当します。

  • 木造の場合
    • 階数が2階建て以下
    • 延べ面積が500㎡以下
    • 高さが13m以下
    • 軒の高さが9m以下
  • 木造以外(鉄骨造など)の場合
    • 平屋建て(1階建て)
    • 延べ面積が200㎡以下

一般的な戸建て住宅の多くは、この4号建築物に分類されます。

4号特例の概要とメリット

4号特例とは、4号建築物を建築士が設計する場合に、建築確認申請の手続きが簡略化される制度のことです。「確認の特例」とも呼ばれます。

具体的には、建築確認を申請する際に、構造計算書や構造図といった構造関係の図書の提出が省略できるという大きなメリットがありました。
これにより、設計者の負担が軽減され、確認申請の審査期間も短縮されるため、施主にとってもコストや工期面での恩恵があったのです。

現行の建築確認申請の流れ

現行の4号特例が適用される場合、建築確認申請の流れは比較的シンプルです。

  1. 設計
    建築士が意匠図(間取り図など)や簡単な仕様書を作成します。構造の安全性は建築士の責任において確認されますが、詳細な構造計算書の作成・提出は省略されます。
  2. 建築確認申請
    作成した設計図書を役所や民間の指定確認検査機関に提出します。
  3. 審査・確認済証の交付
    提出された書類が建築基準法に適合しているか審査され、問題がなければ「確認済証」が交付され、工事に着手できます。

この手続きの簡素化が、2025年の法改正で大きく見直されることになります。

4号特例の廃止はいつから?

今回の法改正で、4号特例は「廃止」というより「縮小」され、新しい制度に移行します。いつから、そしてなぜ変わるのかを見ていきましょう。

法改正の施行日と背景

今回の建築基準法改正は、2025年4月1日から施行されます。

この法改正は、脱炭素社会の実現に向けた省エネ対策の強化と、建物のさらなる安全性確保という2つの大きな流れの中で行われます。4号特例の見直しも、この一環として位置づけられています。

なぜ廃止?国土交通省が示す改正目的

国土交通省は、4号特例を見直す目的として「木造建築物の構造安全性の確保」を挙げています。
(参考:国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について」)

これまでは建築士の裁量に委ねられていた部分の審査を強化することで、建物の品質を底上げし、地震や台風といった自然災害に対する安全性をより確実に確保する狙いがあります。つまり、すべての建物で構造の安全性を客観的な書類で確認できるようにすることが、今回の改正の大きな目的です。

法改正の全体像とポイント

法改正のポイントは、これまで「4号建築物」として一括りにされていたものが、新しい区分に再編されることです。

  • 4号特例の対象範囲が縮小される
  • 新たに「新2号建築物」「新3号建築物」が創設される
  • 構造計算など、審査される項目が増える

これにより、これまで審査が省略されていた木造2階建て住宅なども、構造安全性の審査対象に含まれるようになります。

法改正で何が変わる?【前後比較】

では、具体的に何がどう変わるのでしょうか。改正前と改正後を比較してみましょう。

項目改正前(~2025年3月31日)改正後(2025年4月1日~)
対象建築物4号建築物
(木造2階建て、延べ面積500㎡以下など)
新2号建築物
(木造2階建て、または延べ面積200㎡超の木造平屋)
新3号建築物
(木造平屋、延べ面積200㎡以下)
構造関係規定の審査省略可能(4号特例)原則、審査が必要
(新2号建築物)
提出が必要な図書意匠図などが中心構造計算書、構造図などの提出が必要
(新2号建築物)
省エネ基準への適合説明義務のみ適合義務あり
(新2号・新3号建築物)

建築確認・審査対象の変更点

最も大きな変更点は、これまで4号特例の対象だった木造2階建て住宅などが「新2号建築物」となり、構造審査の対象になることです。
これにより、建築確認の際に、建物の構造が安全基準を満たしているかを詳細な書類で証明する必要が出てきます。

提出が必要になる図書の種類

改正後は、新2号建築物において、これまで提出が省略されていた以下の図書が必要になります。

  • 構造計算書
    地震や風など、建物にかかる力に対して構造が安全であることを計算した書類。
  • 構造図
    基礎や柱、梁(はり)などの部材の大きさや配置、接合方法などを詳細に示した図面。

これらの書類を作成するには、専門的な知識と時間が必要になります。

構造計算の義務化対象の拡大

今回の改正は、実質的に小規模な木造住宅における構造計算の義務化と言えます。
これまでは「仕様規定」と呼ばれる簡易的なルールを守ればOKとされていましたが、今後は許容応力度計算などの詳細な構造計算を行い、その安全性を証明することが求められます。

新制度の対象となる建築物

2025年4月1日以降、建築物は主に「新2号建築物」「新3号建築物」そして一部残る「4号建築物」に分類されます。ご自身の計画がどれに当てはまるか確認しましょう。

新2号建築物の定義と条件

以下の条件に当てはまる建築物は「新2号建築物」となり、構造審査と省エネ基準適合が義務化されます。一般的な戸建て住宅の多くがここに該当します。

  • 木造で階数が2以上
  • 木造で平屋建て、かつ延べ面積が200㎡を超えるもの

新3号建築物の定義と条件

以下の条件に当てはまる建築物は「新3号建築物」となり、省エネ基準への適合が義務化されます(構造審査は対象外)。

  • 木造で平屋建て、かつ延べ面積が200㎡以下のもの
  • 木造以外で平屋建て、かつ延べ面積が200㎡以下のもの

これまで通り4号となる建築物

都市計画区域外などで建てるごく小規模な建築物など、一部は引き続き4号建築物として扱われますが、住宅を建てるほとんどのケースでは新2号または新3号に該当すると考えてよいでしょう。

コストや工期への影響と対策

施主として最も気になるのが、コストや工期への具体的な影響です。ここでは、想定される影響と対策について解説します。

設計プロセスへの影響

  • 構造計算と図面作成の追加
    これまで不要だった構造計算や詳細な構造図の作成が必要になるため、設計にかかる時間が増加します
  • 建築士の負担増
    設計を担当する建築士の業務量が増えるため、設計料が上乗せされる可能性があります。

対策としては、計画段階からスケジュールに余裕を持ち、早めに建築士や工務店に相談を始めることが重要です。

建築コストと工期への影響

  • 構造計算費用の発生
    新たに構造計算を外部の専門家に依頼する場合、数万円から数十万円程度の追加費用が見込まれます。
  • 確認申請の審査期間の長期化
    提出書類が増え、審査項目も複雑になるため、役所や検査機関での審査期間がこれまでより長くなる可能性があります。
  • 工事費への影響
    構造計算の結果、より太い梁や多くの金物が必要と判断された場合、材料費や工事費が上がる可能性も考えられます。

対策として、初期の見積もりの段階で、法改正に対応するための費用(構造計算費など)が含まれているかを確認しましょう。

リフォーム・増改築への影響

今回の法改正は新築だけでなく、リフォームや増改築にも影響します。
一定規模以上(※)の増改築を行う場合、既存の建物部分も含めて現行の耐震基準や省エネ基準に適合させる必要が出てくるケースがあります。

(※床面積の半分を超える増改築など)

特に、古い建物のリフォームを計画している場合は、既存部分の調査や補強工事で想定外の費用や工期が必要になる可能性があるため、専門家と慎重に計画を進める必要があります。

4号特例廃止に関するQ&A

最後に、多くの方が抱くであろう疑問についてQ&A形式でお答えします。

2025年以前の計画はどうなる?

「2025年4月1日より前に建築確認済証の交付を受ければ、現行の法律が適用されますか?」

はい、原則として施行日である2025年4月1日より前に建築確認済証が交付されていれば、旧制度(4号特例あり)が適用されます。ただし、申請のタイミングによっては審査が長引き、施行日をまたいでしまうリスクもゼロではありません。これから計画を始める場合は、新制度を前提に準備を進めるのが最も安全です。

ハウスメーカーや工務店の対応は?

「依頼する会社はちゃんと対応してくれるの?」

多くのハウスメーカーや工務店は、すでに法改正を見据えた準備を進めています。構造計算に対応できる体制を整えたり、標準仕様を見直したりしているはずです。
ただし、対応状況は会社によって差がある可能性も考えられます。契約前に、法改正への具体的な対応方針や、それに伴う費用の見積もりについてしっかりと確認しましょう。

施主が準備しておくべきこと

「家を建てる側として、何を準備すればいいですか?」

施主として準備しておくべきことは、主に以下の3つです。

  • スケジュールに余裕を持つ
    設計や確認申請の期間が長くなることを見越して、全体のスケジュールを組みましょう。
  • 予算にゆとりを持たせる
    構造計算費用や、場合によっては工事費の増加も考慮し、資金計画を立てることが大切です。
  • 信頼できるパートナーを選ぶ
    今回の法改正の内容をきちんと理解し、施主の不安に寄り添ってくれる建築士や工務店を選ぶことが、これまで以上に重要になります。

まとめ

今回は、2025年4月1日から施行される建築基準法改正、特に「4号特例」の見直しについて解説しました。最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。

  • 4号特例の廃止・縮小は2025年4月1日から
    これまで確認申請で審査が省略されていた木造2階建て住宅などが、新たに審査の対象になります。
  • 構造計算が実質的に義務化される
    建物の安全性を証明するため、構造計算書や構造図の提出が必要になり、設計プロセスが複雑になります。
  • コストと工期に影響が出る可能性がある
    構造計算費用や設計期間の増加、審査の長期化などを見越した計画が必要です。
  • 施主の準備が重要になる
    スケジュールと予算に余裕を持ち、法改正に詳しい信頼できる専門家と家づくりを進めることが成功のカギです。

法改正は、より安全で質の高い住まいを社会全体で実現するための重要な一歩です。変更点を正しく理解し、しっかりと準備をすれば、何も恐れることはありません。この記事が、あなたの理想の家づくりへの不安を解消し、次の一歩を踏み出すための助けとなれば幸いです。

▽構造計算に関するお問い合わせはこちら▽
https://zaijubiz.jp/service/structural/

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