私たち建築業にとって、土壌汚染対策法は必ず守らねばならない法律です。その中でも特定有害物質である「六価クロム」は、同様に人体に影響を与えるアスベストと同様に注視しなければなりません。そこで今回は六価クロムについて解説します。
1,六価クロムとは
まず六価クロムとは土壌汚染対策法の中で特定有害物質として指定されている発がん性物質です。もともと自然界にわずかに存在する元素「クロム(Cr)」というものがあり、そこから更に三価と六価と分類できます。
三価クロムは主に研磨剤やガラス、ほうろう、陶器などのうわぐすり、更には高級緑色顔料に使用されています。対して六価クロムはクロムメッキや顔料、更には硫酸アンモニウムやメタノール、アセトンなどの合成の触媒に使用されています。
そしてこのうち、六価クロムには強い毒性があります。人体への影響としては肝臓や腎臓の障害、内出血、呼吸障害、さらには肺がんなどを発症してしまう可能性があるとされています。したがって、現在の水道水質基準では1リットルに対して六価クロムが0.02mg以下でなければならないと定められています。
2,建築業とのかかわり
私たち建築業は六価クロムと切っても切れない関係にあります。私たちが取り扱っているセメントの原料には三価クロムが含まれています。ですが、コンクリートに固化する際に水和物の中に六価クロムが閉じ込められるため、発生することはありません。
しかし、地盤改良の際にセメントと粘土鉱物や有機物などの土粒子の種類によって水和反応が弱まることがあります。その弱まったときに水和物の中にあるはずの六価クロムが溶出します。地盤改良を行う際は、その土地の土質を理解し、地盤改良工事の工法選定を慎重に行い、六価クロムが発生しないように心がけていくことが重要となります。
コスト重視で一般的なセメント系地盤改良工事だけで進めていくのは好ましくないと言えます。
3,現在行われている地盤改良における対策
六価クロムの危険性が高まったことに伴い、2003年2月15日に土壌汚染対策法が施行ました。以来、幾度の改正が重ねられ、六価クロムの溶出は0.02mg/1リットル以下と環境基準値が定められています。そしてこの基準値以下になるように下記のような対策が行われています。
固化材の量を調整する
まず対策として挙げられるものは固化材の量を調整することです。柱状改良工法をはじめとする地盤改良を行う前に六価クロム試験(環境省告示46号試験に準ずる)を行い、適合しているかを確認します。試験結果をもとにセメント固化材の量を六価クロムの溶出量が環境基準値以下になるよう調整していきます。
六価クロムが発生しない工法で対応する
また、六価クロムが発生しない、つまりセメント系固化材を使用しない地盤改良の工法を取り入れることも対策として挙げられます。主な工法としては自然砕石を使用し、改良機で圧力をかけながら締固める砕石柱を造成していく砕石パイル工法、銅製の杭を支持層となる地盤まで垂直に打ち込んでいく鋼管杭工法があります。特に鋼管杭工法は軟弱な地盤にも対応できることから、より六価クロムの発生を防ぐことができます。
4,終わりに
六価クロムは土壌汚染対策法の中で特定有害物質として指定されている発がん性物質であり、建築業にとって切っても切れない関係にあります。現在は六価クラムをなるべく発生させないための対策も取り入れられています。地盤改良を依頼された際は環境保全を意識した工法を取り入れ、品質や工期をより良いものとできるよう動いていくことが大切です。そのためにも、六価クロムの知見を深めたうえで地盤改良工事を進めていけるようご理解いただけますと幸いです。
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